研修期間: 2007年8月6日(月)〜2007年9月7日(金)
        午前10時00分 〜 午後4時00分 (土・日曜日は休講)

研修時間: 125時間

研修会場: 東京外国語大学本郷サテライト
        (東京都文京区本郷2-14-10)

講師:   
  鵜沢 洋志(東京外国語大学外国語学部・非常勤講師)
  Nadiah Hanim(同外国語学部・非常勤講師)
  Mohd Nazmi(東京工科大学大学院・研究生)  

文化講演:
  左右田直規(東京外国語大学外国語学部・准教授)
  サイフル・バハリ(同外国語学部・客員助教授)
  森元繁(同外国語学部・非常勤講師)
  坪井祐司(AA研・共同研究員)

受講料: 75,000円(税込み)

教材:
  『マレー語文法テキスト』
  『マレー語会話・読解テキスト』
  『マレー語語彙集』
  音声教材

講師報告:

マレー語研修報告(主任講師:鵜沢洋志)

0.はじめに
 マレー語は、決して「マニアック」な言語ではない。わりと「メジャー」な言語ではなかろうか。マレーシアという国自体、産業やら観光やらで、日本人にとっても無関係な国ではないはずである。それにも関わらず、日本国内には、マレー語を教えている研究機関、あるいは一般の語学講座が少ないようである。今回の研修に参加された受講生の声を聞くと、これまでマレー語の講座が身近になかった(特に関西方面は、そうらしい)ということで、それだけでも今回の言語研修でマレー語を開催した意義はあるだろう。むしろ、このような需要に応えられることは、教える側にとっても、やりがいのあることである。アジア・アフリカ言語文化研究所の峰岸先生から、言語研修の打診があったとき、二つ返事で快諾したことは、「後悔」ではなく、とても貴重な「経験」を産みだしてくれた。特に、「AA研方式」とも言える「日本人とネイティブによるティーチング」スタイルは、今後の自身の教育にも影響を与えるものだと感じている。改めて、言語研修に参加する機会を与えてくださったことを、AA研言語研修研修専門委員会の関係者各位に御礼申し上げたい。

1.日程・期間
 研修は、8月6日(月)から9月7日(金)までの5週間にわたり行われた。1日あたり5時間、研修の総時間数は125時間。午前10時より12時までが、文法の授業。12時より1時間、昼食休憩。午後1時より2時までが、読解の授業。2時から、10分程度の小休憩。最後、4時までが、会話の授業。

2.会場
 平常授業時は、文京区にある、東京外国語大学本郷サテライトの3Fを講義室として、5Fを講師控え室として(昼食時は受講生と共に食事場所として兼用)利用させていただいた。共に、空調設備や音声・映像教材が自由に使える、快適な研修所であった。大学の「臨時休業」期間中は、同じ文京区にある東京大学図書館の3Fにある会議室を3日間貸していただいた。特にトラブルはなかった(はず)。

3.講師

<研修担当講師>
鵜沢洋志(東京外国語大学 非常勤講師)
Nadiah Hanim(東京外国語大学 非常勤講師)/ Mohd Nazmi(東京工科大学大学院 研究生)

 ネイティブ講師の二人は、積極的に授業に参加してくれた。特に、日本人講師の意向をきちんと汲んで協力してくれたため、「楽しく厳しくやっぱり楽しい」言語学習に少しでも近づけたこと、改めて感謝したい。

<文化講演講師>
Saiful Bahari(東京外国語大学 客員准教授)   
左右田直規(東京外国語大学 准教授)
坪井祐司(AA研 共同研究員)   
森元繁(東京外国語大学 非常勤講師)

 文化講演は、第一週から四週目にかけての金曜日午後に2時間ずつ行われた。講演内容は、マレーシア社会、多民族社会のあり方、マレーシアの歴史、ブルネイダルサラーム共和国に関してなど、様々なものであった。受講生たちにとって、語学以外で、興味深い話を聞く機会となったことだろう。

4.受講生
 全受講生数は、14名であった。そのうち、東京外国語大学からの単位履修生は4名である。内訳は、男性8名・女性6名、年齢別では、20代6名・30代4名・40代2名・50代・1名60代・1名である。
 25日間の「修行」を共に乗り切ったメンバーだけに、一人一人にもいろいろ思い入れはある。紙幅の関係上、ここでは、名前だけを掲載させていただくことにする。宇佐美裕三さん、川上雄作さん、岸脇誠さん、菅田晃平さん、杉村洋平さん、鈴木薫さん、高橋宏彰さん、中島佳奈子さん、福島康博さん、藤田由紀さん、森達郎さん、森山栄恵さん、山出佳代さん、竹野妃砂子さん(以上、修了生14名)
 こちらの14名がいたからこそ、今回の研修は無事に楽しく終わったと言える。マレー語初級者をすでに通過してきた経験者も、同系統言語のインドネシア語経験者も、まったくの初学者も、一人一人がマレー語と正面から向き合って、吸収しようとする姿勢を保ちつづけてくれたことが、本研修を成功へ導いてくれた。皆に、感謝。

5.テキスト
 言語研修用テキストとして、以下の3冊を用意した。(著者:鵜沢洋志)
『マレー語 文法テキスト』(全25課) 
『マレー語 会話・読解テキスト』(全20課ずつ)
『マレー語 語彙集』(本研修テキストに対応)

6.研修目的と内容
 本研修は、マレー語の初学者を対象としたものであった。研修の目的としては、第一に、基本的な文法事項をしっかりと習得することである。第二に、それらを身につけることで、まとまった文章を読む力を養い、新聞記事くらいは読めるようにすること、そして第三に、マレー語による基本的な会話能力を習得することである。
 授業では、文法テキスト、会話・読解テキスト共に、一日1課のペースで進めていった。テキストを進めていく以外に、毎週金曜日に基本単語と基本文例の小テストを行った。今後の言語能力の基盤となるために、基礎語彙と文法事項の定着には特に気を配って授業を組み立てた。
 その結果、研修に出たコメントや個人的な連絡、及び授業での出来具合からすると、ほぼ全員が基本的な文法を理解し、平易な読みものや簡単な会話をクリアすることができるようになったと考えられる。ゼロからの学習であっても、熱心に取り組むことで、5週間あれば飛躍的に言語習得が可能となることがわかった。個人的には、テキストや授業に関して、「体系的」で「わかりやすい」という感想を受けたことが印象に深い。
 限られた時間の中で、言語学習の全てをこなすのはもちろん無理であるが、発話能力だけでなく、会話におけるリスニング能力も、もう少し訓練すべきだったかもしれない。それはまた別のお話・・・かな。

7.おわりに
 本言語研修が、誰一人脱落せずにやり遂げることができたのは、鵜沢の指針を信じてついてきてくれた、マレー人をも凌ぐ受講生全員の寛容の心である。首からタオルをさげた講師に、内心、不安もあったのではないだろうか。笑いと真剣さが詰まった言語研修、本当にお疲れさまでしたと皆さんに伝えたい。終わった今では、5週間という「長くて短い、短くて長い」充実した期間に蒔いた種を、少しでも実り豊かなものにさせて欲しいと願うだけである。これに関しては、復習の継続ということで、今後のフォローアップもきちんと考えていくつもりである。

(現在、文法テキストの復習問題をMLにて毎週一課ずつ配信中。機会があれば、音声練習の復習も兼ねて、以前から話していた言語研修合宿〜温泉湯けむり編〜でも行えればいいですね、皆さん!)

修了式にて記念撮影。