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女性のみが伝える文字
■女書(変形漢字)(存続?)/漢語方言
女書 西

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▲展示パネル
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 1958年、中国湖南省江永県に住む女性が北京を訪れました。北京の人間には女性の方言がほとんど通じなかったため、筆談しようとしたところ、女性の書く文字はさらに理解不能の文字でした。これが女書の知られるきっかけとなった出来事といわれています。
 女書は、1980年代初頭から学界に知られるようになり、90年代からようやく本格的な研究が登場しました。その結果、この文字が、ある地域の女性のみが伝承する文字であること、古くから存在すること、伝承者は減少し、消滅の危機にあること、などの驚くべき事実が明らかになりました。
 解放前、中国の女性の多くは漢字を習得する機会がなかったため、高齢の女性が、それも独特な文字を伝承しているのは稀有な事例です。比較的閉鎖的な地域環境、女性が集まる場所の存在、教育・文化を重んじる風潮など、さまざまな要因があったとされています。
 現在知られている字形は約1,000字。漢字を45度傾け、右上から左下に線を書くような外見をしています。全体の八割は既存の漢字と対応します。一般に縦書きで、右から左に行が移ります。 「表意文字」あるいは「漢字」としては、1,000字は少ない数です。これだけの数で機能する理由は、「表音文字」的な用法もあるからです。例えば、「男」という漢字から生まれた女書は、「男 nong」と同じ発音を持つ「南」「農」「濃」なども表わします。文字の表す意味は前後の文脈で決まります。漢字の万葉仮名的な用法になじみのある日本人には理解しやすい体系と思われます。
『中国の女文字』
(遠藤織枝,1996,三一書房)より 「女書之歌」の一部