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西夏文字と仏典
■西夏文字/西夏語 (消滅)
チベット文字 西

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▲展示パネル
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 西夏文字は、チベット・ビルマ系言語の一つである西夏語を表記した文字です。現在の寧夏・甘粛・オルドス地方に建国した西夏(一〇三八〜一二二七)の初代皇帝李元昊が一〇三六年に公布しました。
 数ある「擬似漢字」の中でも、一見複雑で、筆画数の多い文字ですが、その性格や用法は漢字に近いものです。個々の文字は、特定の意味を持つ構成要素(偏や冠のような)をもちます。そして漢字の「会意」「形声」のような合理的な造字法によって新しい文字がつくられます。契丹文字やチューノムなど、他の「擬似漢字」と異なる点は、漢字の字形そのものとは、ほとんど無関係であることです。偏や冠にあたる構成要素には象形性・指事性が極めて薄くなっています。また、それらの構成要素が単体字となることはまれで、何らかの他の要素が加えられます。会意字の造り方もユニークです。たとえば、
こころ(心)+ ない (ない) の組み合わせから わすれる(忘れる)
わすれる(忘れる)+ しなくなる(〜しなくする)の組み合わせから 念じる(念じる)
 このように、西夏文字の造字法には独自の発想が反映しています。
西夏文字は、非常に公用性が高い文字でした。皇帝の命により西夏語に訳された大量の仏典・漢籍、西夏独自の詩歌、法典、契約文書など、豊富な資料が現存しています。西夏語と漢語の対訳語彙集や、チベット文字の「振り仮名」がつけられた西夏文仏典も残っていて、当時の多言語社会をうかがわせます。興味深いことに、西夏文字の発音や意味を西夏語によって記した字書も今に残っています。現在では西夏語も文字も忘れ去られましたが、こうした資料が文字・言語の解明に大きく役立ちました。

空即是色 色即是空
[西夏語対訳]

■西夏文字による般若心経