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漢字系文字の派生

 

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▲展示パネル
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 中国とその周辺には「漢字から派生した文字」や「擬似漢字」と呼ばれる、漢字の仲間の文字があります。
まず、「漢字字形を総合的・部分的に取り入れた」グループです。自分たちの言語を漢字で表記した日本の「万葉仮名」などは、漢字自体の変形は行わず、漢字をそのまま総合的に取り入れています。貴州省を中心に分布する水族は、独自の「水文字」をもっていますが、漢字をほとんどそのまま利用している文字も少なくありません。ベトナムの「チューノム」や、中国の「壮文字」は、漢字本来の字形・意味・発音を比較的強く利用した文字体系です。
 一方、日本の「平仮名」や、中国湖南省の一部で女性のみが使う「女書」 という特殊な文字は、漢字を崩したり変形させたりした結果、生まれました。日本の「片仮名」は、漢字の字形の一部から作られた文字です。そして、漢字の「正字」とされる字形も、近年の文字表記改革とともに大きく変化しました。現代の漢字も、古来の視点に立てば「変形漢字」といえるでしょう。
 これに対し、「表記する言語や、文字の性格は漢字と異なるものの、一見、漢字にみえる」グループが存在します。「漢字に似た字形の文字」というので、「擬似漢字」と呼ばれます。十世紀から十二世紀に、中国北部・西北部に独立国をつくった民族は、固有の文字体系をもちました。東洋史の中でも有名な「契丹・西夏・女真」の文字がこれにあたります。
 これらはそれぞれ、あらわした言語が異なり、また文字の性格が違います。単に字形だけなら契丹文字(契丹大字)・女真文字は漢字に近く、文字の構成法については西夏文字と漢字が似ています。これらの文字は、実は字形や構成要素がまったく漢字と異なるものが多いのですが、基本的な筆画・点画 「―」「ノ」「ヽ」などが漢字と共通するので、外見的には漢字系文字と認識されるのです。
似て非なる漢字の仲間たち