これは、ヒンドゥー教のチャイタニヤ派に関係する貝葉の写本で、オリヤ文字で書かれています。
この写本は、極度にサンスクリット語化されたオリヤ語で書かれており、詳細な内容の判別は困難です。しかし、冒頭の「ガウラチャンドラに帰命す」といった表現などからもチャイタニヤ派に属する作品であることは確実です。分量から考えるとチャイタニヤの伝記かもしれません。「ガウラチャンドラ」は、字義通りには「白い月」という意味ですが、「ガウラ」の異音形がベンガル地方を指すことからチャイタニヤの異名として一般に用いられています。
チャイタニヤ(サンスクリット語形、ベンガル語ではチョイトンノ)は、16世紀のベンガルに出たクリシュナ信仰の教祖です。クリシュナに対する熱烈な愛情こそが救いへの道であるという教えを説き、実践した偉大な宗教家です。オリッサ州のプリーのジャガンナート(=クリシュナ)寺院においても長期滞在して活動し、その地で亡くなっています。
写本が筆記された年代は、おそらく19世紀後半程度であると思われます。 (高島 淳)
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