<書き方>
書写する人は、この状態の貝葉を購入して、墨打ちをして各葉に5行から6行の基準線を引きます。書き記す道具は、筆やペンではありません。一種の鉄筆で、貝葉に彫り込んでいくのです。彫り込む際には、机を用いずに、同じ大きさの貝葉を数枚束ねて布でくるんだ台を用います。この上に貝葉を置いて、親指が上にくるように左手で支えます。左手の親指の爪をのばして先端に小さな穴をあけ、鉄筆が途中で引っかかって、鉄筆の先端がごくわずかしか下に突き出ないようにしておきます。右手で鉄筆の上を持ち、左手の親指との共同作業で貝葉に彫り込んでいきます。左手のなかで、台と貝葉をずらしながら少しずつ書き込んでいくのです。この状態では彫り込まれた文字はほとんど読めない状態です。読めるようにするためには、彫り込んだ後で、煤を油と混ぜたものを擦り込んでやる必要があります。
各葉は表と裏とひっくり返して書かれ、たいてい左端に連番がつけられます。普通の数字を用いない場合には、ka, kha, ga
.... ha, kaa, khaa ....haa, ki, khi ....などというアルファベットの子音列を母音を交代させながら用いる方法などが行なわれます。
卒塔婆の表側には、kha ha ra va a という、空・風・火・水・地の五大と同時に胎蔵界の大日如来を象徴する文字と本尊の真言が表に書かれます。裏には金剛界の大日如来の
vaM が書かれるのが一般的です。裏側にはその他に、破地獄真言などが書かれることが多いですが、宗派によって様々です。(回答:高島淳)