国立民族学博物館所藏「中西コレクション」
B05
仏教説話写本
シャン文字、シャン語

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写真のような折本は、貝葉と並んで東南アジア大陸部で広く見られる写本の形態です。ビルマ語では「パラバイッ」、タイ語では「サムット」、そしてこの写本に書かれた言語であるシャン語では「パップサーpap sa」と呼ばれます。

シャン語はタイ系に属し、ビルマ、タイ、ラオス、中国雲南省を結ぶ山間盆地一帯に広がる、主にタイ系民族を中心とした「シャン文化圏」と名付けられる複合文化交流圏の主要言語の一つです。シャン文字ビルマ文字をもとにつくられました。成立の時期は定かでありませんが、おそらく15世紀以降と考えられます。

内容は仏教関係の説話で、人がどのような行為をなすことが功徳となるのか、どのような方法によって涅槃の世界に達することができるのかを説いたものです。信心深いシャン人仏教徒が、お寺に保存されていたものを見ながら書き写し、自宅で保存していたものでしょう。年代は比較的新しく、20世紀のものと思われます。

シャン文字で書かれている中に一部ビルマ文字も混じっている点、また、ビルマ語風のパーリ語の単語が極めて多く使われる点などに、「シャン文化圏」の言語的・文化的複合性を垣間見ることができます。

(新谷忠彦・澤田英夫)