アジア・アフリカ言語文化研究所所蔵
A03
旧約聖書(ヒンディー語訳)
デーヴァナーガリー文字、ヒンディー語

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旧約聖書のヒンディー語訳。文字はデーヴァナーガリー文字。ヒンディー語で書かれた奥付から、出版年は1812年、出版地は シュリーラームプル(英語名Serampore)であることがわかります。インド西ベンガル州の州都カルカッタの北方に位置するシュリーラームプルは、インドにおける近代活版印刷発祥の地です。18世紀末からキリスト教宣教師によって精力的にすすめられたインド諸語の文法書・辞書の編纂、聖書翻訳などの出版のため、インド系文字活字の製造を含めて近代インド活版印刷の基礎がつくられました。展示されている本は、この時代に印刷されたものの一つです。19世紀に入ってから、活版印刷の中心はカルカッタに移っていきます。

ここに挙げた画像は、旧約聖書の冒頭「はじめに、神は天地を創造した。」で始まる部分です。展示番号 C02 のサンスクリット訳との比較は、聖書翻訳史の上でも興味深い材料を提供してくれます。また、この展示物は、インドにおけるデーヴァナーガリー文字の活版印刷史の観点からのみならず、近代ヒンディー語散文の初期のサンプルとしても重要です。

(町田 和彦)