シュリー=ヴァラダラージャーペールーマール ヴィシュヌ寺院

タミル文字テルグ文字ビルマ文字デーヴァナーガリー文字

 

ヤンゴン市中心街東部にあるヴィシュヌ寺院の一つ。ヒンドゥー教寺院は他にも付近に5つばかりある。

1枚目は寺院正面入口から仰いで撮ったもの。ビルマ語(ビルマ文字)とタミル語(タミル文字)で寺院の名前が記してある。

2枚目はナラスィンハの像を納めた寺院の内陣につけられたプレート。ナラスィンハはヴィシュヌの化身の一つである人獅子。

いずれの文字で書かれた内容も基本的には「シュリー(栄えある)・ナラスィンハ」であるが、文字によって若干の異同がある。

左上はタミル文字で書かれたタミル語。タミル文字には、sやhを表す固有の文字がない。サンスクリットの表記に用いられるグランタ文字なら問題なく書き表せるのだが、ここではあくまでもタミル文字にある要素だけで処理しようとしている。仮にこのタミル文字をそのまま読むと「シュリー・ナラチンマラ」のようになる。実際の発音は「ナラスィンハ」に近いというのだが、「ナラチンマラ」の最後のraがどうしてここに現れるのかは不明。あるいは誤りか。

右上はテルグ文字で書かれたテルグ語。これだけが後に「ムルティ」(像)という語を伴う。(テルグ語を母語とするペーリ=バースカララーオ所員に伺った。)

左下はビルマ文字で書かれたビルマ語。サンスクリットの「スィンハ」はパーリ語では「スィーハ」となる。ビルマ語はパーリ語からこの語を借用したため、「ナラティーハ」となっている。(「ナラスィーハ」でないのは、「s→歯音のt」という音変化がビルマ語に起こったからである。)4つのうちでこれだけが「シュリー」に当たる接頭辞なしで書かれている。

右下はデーヴァナーガリー文字。ヒンディー語なら「シュリー・ナラスィンハ」であるべきところだが、誤記であろうかsの上に鼻音化を表すアヌスヴァーラがない。また「シュリー」の母音である長いiを表す記号の形が不自然である。

ビルマ:ヤンゴン市51番通り
2002年1月撮影

 

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