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『毎日新聞』京都版 2004年5月10日(朝刊)より転載

毎日新聞記事
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悲劇伝える使命

中米グアテマラの内戦時代に軍が行った民間人大量虐殺を、犠牲者の遺骨をあしらった作品で伝える同国の写真家、ダニエル・エルナンデス・サラサールさん(47)がこのほど立命館大学衣笠キャンパス(北区)で講演、「未来を築くため、過去の悲劇に対する社会の関心を喚起し続ける」と活動の意義を語った。【太田裕之】
 [写真キャプション:報告書の表紙に使われたダニエルさんの作品「真実を明らかに」。発掘された犠牲者の肩甲骨を天使の羽に見立てた。]

報告書「グアテマラ 虐殺の記憶」表紙の写真家 「声あげて」とダニエルさん  立命館大で講演会

 ダニエルさんは日本学術振興会の「人間の安全保障学」研究事業の一環で招かれて初来日。7日にあった同大での講演は国際関係学部の学生委員会などが企画し、市民や学生80人が参加した。
  同国では96年まで36年間続いた内戦下で、軍がゲリラ掃討を名目に一般市民を弾圧し、20万人を超える死者・行方不明者と15万人の難民、150万人の国内避難民を出した。被害者の大半がマヤ先住民族だった。
  この人権侵害の真相を究明し、社会の再建に生かそうかと、カトリック教会は98年、加害者と被害者計6000人の証言を集めた報告書「二度と再び」(邦訳版は「グアテマラ 虐殺の記憶」=岩波書店)を刊行した。その表紙に採用されたのが、犠牲者が遺棄された秘密墓地の発掘調査を取材していたダニエルさんの作品だった。
  4枚1組の作品は、犠牲者の肩甲骨を羽とする天使に見立てられたマヤの男性が、両手で口をふさぎ、目を覆い、耳を押さえるが、最後は声を上げる。「真実を明らかに」と題した写真は、弾圧やその免罪に対する告発・抗議の象徴となった。
  同国では96年の内戦終結後も軍の影響力は維持され、報告書が公表された2日後、責任者の司教は暗殺された。「内戦の背景の不正や政治的抑圧は残ったまま。過去の弾圧による恐怖感が今も社会を支配している」と、ダニエルさんは語る。
  司教暗殺の1年後、ダニエルさんは"声を上げる天使"の写真を、軍の施設や国会周辺など首都の35カ所に張り出した。「自分たちの世代には記憶の風化と戦い、悲劇が再び起きないように伝えていく使命がある」との考えからだ。この街頭展示は国外でも続け、イラク戦争が始まった昨年3月には米国の軍事基地のそばで実施。「グアテマラで軍を支援した米国が、世界で何をしたのか」と訴えた。今回の来日では広島市も訪れ、平和公園など5カ所で展示した。
  今回の講演会で「脅迫を受けたことはないか」と質問されたダニエルさんは、無言電話などの嫌がらせを受けていると打ち明けながら、こう語った。「沈黙は死と同じ。思ったことは発言する」

東京で写真展開催中

  ダニエルさんの写真展は16日まで東京・新宿区で開かれている。問い合わせは東京外国語大の「人間の安全保障学」事務局(042・330・5665)。


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