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2010(平成22)年度 教育セミナー報告

山ア 典子(東京大学大学院総合文化研究科)

 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所(以下AA研)が毎年実施しているという本セミナーのことは、大学構内のポスターを通して学部生のときから知っていた。それ以来、修士課程に進学したらぜひ受講したいと心待ちにしていた。一方で、イスラームを扱ってはいるが中東地域を研究していない自分が応募してもいいものか、という不安もあった。しかし、それは全くの杞憂であった。2010年9月18〜21日に開催された「中東☆イスラーム教育セミナー」の4日間は、大学院進学後の半年の間で、最も充実し学問的刺激に満ちた時間となったのである。以下、特に印象に残った点をいくつか述べたい。

 第一に、先生方の講義を拝聴して、各自が今後研究を進めていく上で避けては通れない数々の問題について改めて深く考えさせられた。例えば、東長靖先生が強調していらした精神衛生管理の重要性は、遅かれ早かれ受講生一人ひとりが実感するだろう。セミナー期間中繰り返し言及された研究の政治性、及びディシプリン研究と学際的研究の問題に関しては、セミナー修了後の現在も受講生の間で頻繁に意見交換がなされている。また、近藤信彰先生のお話を受けて、国民国家的枠組を越えた視野で地域をとらえることの必要性を強く感じた。中国ムスリム社会に研究の足場を置きながらも、中央アジア・中東との関係や世界各地のムスリム・マイノリティ社会との比較をも考えなければならない自分にとっては、非常に示唆に富むお話であった。
 第二に、先生や受講生の、専門地域やディシプリンの異なる報告者の発表に対するコメント・質問は的確かつ有益であり、ぜひとも見習っていきたいと思う。私が4日目に行った発表へのコメントも、ただ問題点を指摘するのみならず、今後その改善策や発展方法を考えていく上で参考になりそうなものばかりであった。
 第三に、普段なかなかお会いすることのできない先生方や受講生と、4日間にもわたって朝から晩まで徹底的に議論できることの贅沢さを感じた。昼間の休憩時間中はもちろんのこと、夜はおいしい食事やお酒を囲み、白熱した議論はどこまでも続く。現地滞在中のこぼれ話や中東のお酒などの話題でも大いに盛り上がった。また、元来関心があった文化人類学、トルコやモロッコ、東南アジアのイスラームについて先生方から直接お話を伺うことができたのも、個人的には大きな収穫であった。
 とにかく全日程、よく学びよく考えよく議論し、よく笑いよく食べよく飲んだ。「教育セミナー」の名のとおり、このセミナーは真に教育の場であった。この期間中に得られた知見や人脈はいつか大きな意味を持つと確信している。

 ところで、本セミナーはイスラームや中東に関連する人文・社会科学研究を志す人に広く門戸を開いている。中東以外のイスラーム地域やイスラエルに関心を持つ人も積極的に参加し、より多様な学問関心を持つ受講生が集まればなおよいと思う。 来年も時間さえ合えば、いや、ぜひとも時間を合わせて、またこのセミナーに参加したい。

 最後になりますが、貴重な学術交流の機会を与えてくださいましたAA研の先生方や講師の先生方、AA研FSC事務局の千葉さま、今後も共に学ぶ受講生の皆さま、誠にありがとうございました。

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