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2010(平成22)年度 教育セミナー報告

鈴木 啓之(東京大学大学院総合文化研究科)

 2010年9月18日から21日にかけて開講された「中東☆イスラーム教育セミナー」は、10人の受講生と、それを上回る数の先生方の間でさまざまな学問的交流を深める貴重な機会であった。特に、「教育」という面では、多くの先生方に、ご自身が研究を志し始めた頃の葛藤や苦労話などを紹介して頂き、大学院生としての在り方に1つのモデルを提示して頂いた。また、さまざまな地域や学問分野(ディシプリン)における現在の研究状況を知ることで、そのなかで自らの志す研究がどのような位置を占めるのかを確認することもできた。以下では特に印象深かった事柄について、自らの関心とからめて手短にまとめる。

■研究と時間
 飯塚正人先生による開講のお言葉のなかでは、大塚和夫先生の「時間を守れることが研究者としての基本」とするお話が紹介された。ともすれば発表時間を超過することが熱心さの表れのように思いがちな学生にとって、強く自戒を促す言葉であった。また、東長靖先生には大学院生の2つの心得の1つとして、期限を守るということにも注意を喚起して頂いた。改めて、研究が時間との駆け引きのなかで行われるものであることが印象づけられた。

■自らの研究が帯びる政治性
 3日目にパレスチナのアル=アクサー・インティファーダについて発表する機会を得たが、質疑応答のなかでは研究において不可避的に問われる政治性について示唆的なコメントを頂いた。同日にご報告された錦田愛子先生のお話は、その点を強く意識するよう求めるものであり、自らの研究を改めて問い直す視点を得ることができた。

■地域研究とディシプリン
 初日の東長先生のお話を皮切りに、セミナーのなかでは自らのディシプリンを持つことの重要性が繰り返し説かれた。お話を頂いた先生方は、それぞれに研究生活のなかで政治学や歴史学、社会学、人類学などのディシプリンを獲得してこられ、ご発表を通じてイランやモロッコ、パレスチナ、マレーシアといった地域研究とそれらのディシプリンをいかに融合してきたのかという具体例を示して頂いた。最終日には間寧先生より、トルコの事例をもとにして具体的な研究の組み立て方についてお話があり、非常に興味深く拝聴した。

■受講生による発表
 受講生の発表では、同じく修士課程に所属する学生を中心として、クウェートの国民統合やパレスチナ・ナショナリズム、中国の回民軍閥、イラクの1920年暴動について発表がなされた。別個に記すことはしないが、それぞれ発表ごとに学ぶ所が多く、大いに刺激を受けた。3日目には自らも発表する機会を得たが、先生方や受講生の多くから非常に有益な質問やコメントが続き、自らの研究における問題点や発展の可能性、さらには発表の方法に至るまで詳細な指摘を受けることができた。白熱した議論は会場を変えてその晩遅くまで続くことも多く、アルコールではなく話の中身を翌日に残そうと様々な努力を繰り返すことになった。

 最後にではあるが、運営にあたられ、昼となく夜となく受講生の相談に乗って頂いた先生方、共に語らいそして今後は共に研究を進めることになる受講生の皆さん、そしてレジュメや会場の準備に心を砕いて頂いた事務局の千葉淑子さんに感謝申し上げる。

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