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2010(平成22)年度 教育セミナー報告

間 寧(日本貿易振興機構 アジア経済研究所)

  比較政治学における一国研究:トルコの事例

 比較政治学における実証研究は多くの場合、時、場所、文脈の制約を受けた事例研究である。しかしひとつの事例研究でも、一般実証理論との関連性を築くことにより、その価値を高めることができる。関連性を築くための方法は先行研究サーべーを行うことである。それにより、一般実証理論で何が主要な問題なのか、自分の研究がその問題領域にどのように貢献できるのかがわかる。関連性を築けたかどうかは、自分の論文のresearch questionとresearch designに現れる。そして論文のConclusionsはresearch questionへの答えになっていなければならない。

 報告者は2つの事例を用いて、一国研究において一般実証理論との関連性を築く試みを示した。事例1では、違憲立法審査制度についての一般実証理論で、@同制度が三権分立を確保し民主主義定着に寄与するという議論とA「中心・周辺」亀裂の強い社会では、同制度が政権与党による立法を阻止して少数派体制エリートの覇権を維持しているという議論を取り上げ、「中心・周辺」亀裂の強いトルコの事例を左記の2つの仮説について検証した。1984-2007年の違憲立法審査判決データの分析の結果、@の傾向がAより強いことが確認された。

 事例2では、民主化過程では選挙が繰り返されるにつれ投票流動性(直近の2つの選挙の間における政党間の票の移動の度合)が低下することが一般的に観察されているが、トルコの場合はこの低下傾向が見られないことを疑問として取り上げた。そしてその説明として、2つの仮説(@社会の亀裂構造が政党制に反映されていない、A不安定な経済が大規模な懲罰的投票をもたらしている)を立て、過去半世紀の選挙データ分析からAが妥当することを示した。さらに発展途上国民主主義への含意として、宗教・民族政党が特に民主化初期の段階で政党制定着に寄与するのに対し、マクロ経済不安定性が政党制定着を阻害するとの最近の研究知見を支持すると結論づけた。

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