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2009(平成21)年度 教育セミナー報告

西村 弘代(東京大学生産技術研究所研究生)

 以前から気になっていたセミナーで、いつかは参加したいと思いながらも今は時期ではないと思い続けて気づけば4年間が経っていた。今年ようやく参加する機会を得ることができた私を後押ししてくれたのが、ウズベキスタンのヒヴァが写っているポスターだった。というのも、イスラームの建築・都市を志してきた私が研究の地として選んだのが、同じウズベキスタンのブハラだったからだ。

 建築という先生方の専門ではない分野から参加させていただく以上、未熟でも自分の研究を先に進め、分野を超えた貴重な意見をいただきたいという一心で研究発表をさせていただいた。とはいえ、まさか今回のセミナーが自分の発表から始まるとは思いも拠らなかったが、先生方から頂いたコメント、アドバイスによって私の研究の弱点を実感するとともに、ご指摘いただいた言葉は今後研究を行っていく上で、重要な手がかり得ることができたと思う。その意味においても、“教育”セミナーであったことに心から感謝している。

 具体的には、私の研究の中での言葉の中途半端な使用、事実関係の曖昧な把握、結論の導き方の甘さといった点をご指摘いただき、発表する際の最低限のマナー、そして研究の足固めの方向性を教えていただいた。まさに目下のところその点を埋めるべく研究をすすめている。また、今後の研究に関して先生方にお話してご意見を頂けたことで、おそらく将来ぶつかるだろう壁に対しても、踏ん張りがきくように思えることがなによりも嬉しい。学生の想いを頭から無理だと決め付けず、あたたかい目で見てくださった先生方の素晴らしさを実感している。

 そうした先生方の講義は、とても刺激に満ちていた。ソ連時代のイスラーム禁止の動きは、決して厳しいだけではなく内情はむしろ緩やかな側面を持っていたのではないか、といった今まさに研究されているテーマでお話していただき、また中東にあって長くムスリムと同じ地に暮らしてきた異教徒、一方で東南アジアという辺境の地にあって繰り返されるムスリムとしての闘争、といったイスラーム、あるいは地域などの言葉では収まりきらない事象を、鋭い視点を持って見せていただけた。また、教育セミナーならではの講義も聴くことができた。中東人類学の見取り図の提示と、そこから今後の研究の方向性についてのお話は、分野が違うものの重なる部分も多く考えさせられた。

 もちろん、同じ受講生の発表、質問の仕方などから学んだことも非常に多かった。自分の未熟さを痛感したのだが、一方で自分の分野に自信を持てたのもまた、受講仲間がかけてくれた言葉に拠るところが大きかった。4日間という短い期間だったが、みなさんと出会い、同じ時にセミナーを受講できたことにとても感謝している。

 最後に、4日間のうち1日だけ欠席せざるを得なかったことが後悔として残っている。そこで聞き逃した話は今レジュメをみても得ることができない。一方で、セミナー後のお酒の場では先生方と親しく話せる機会があり、普段聞けないような留学中のお話を伺い、お人柄に触れる中で貴重な時間を過ごさせていただいた。これからも、志のある学生が研究をしていく上で必要となるだろう見える力と見えない力の両方を与えてくれるこの素晴らしいセミナーが持続していってくれることを願っている。

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