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2008(平成20)年度 教育セミナー報告

大井 直之(東京学芸大学大学院教育学研究科社会科教育専攻哲学・倫理学コース修士課程)

 私はこのセミナーを指導教官の紹介で知った。当初、イスラームを専門的に学び始めて約半年足らずということもあり、このようなセミナーに自分が参加して、議論についていけるのか不安であったのが正直なところである。しかし、現在の学校の状況では他の研究者との交流も少なく、自らの中東・イスラームへの見地を広げようと応募を決意した。以下、中東・イスラーム初心者である私が、このセミナー全体を通して抱いた感想を率直に述べたい。

 まず、セミナーの内容であるが、どの講義・発表も普段研究室に篭っていては決して聞くことができない貴重なものばかりであった。さらに、講義や受講生の発表は、その一つ一つがより丁寧、詳細に説明され、初心者の私でも興味深く聞くことができた。その中でも特に印象に残った内容は、多くの発表の中で議論された「イスラームだけでは、問題は解決されない」ということである。確かに私たちが現在研究を行っている分野には、イスラームという巨大で難解な宗教(単に宗教とは言えないが)が少なからず関わっている。しかし、イスラームを知れば世界が分かるといった、よく考えれば疑問を抱かざるを得ないことに、私たち(特に私)は注意を怠っているときがある。私自身は、19世紀エジプトにおける思想家ムハンマド・アブドゥフの思想研究を行っているが、ムスリムである彼の思想を論じる上でさえイスラームだけでは語れない、歴史上の他国との関わり、彼の政治上の立場等々、考えなければならない問題は多く、より多面的な視点から研究に取り組む姿勢が必要であることを再確認することができた。

 またセミナーを通じて、分野の相違に関わらずその議論に積極的に参加する難しさも痛感した。その難しさとは、ただ単に質問をするタイミングが分からないとか、そういった問題ではない。他の質問者の内容は、自分とは注目すべき点が異なり、その質問が発表の核心を捉えており、そのような意見、質問を自分は考えることができなかった。分野に関わらず論文の核となる部分、それをしっかりと把握し、そこから見えてくる疑問、課題を導き出すことは、自らの研究を進めていく上でも欠かせない作業である。本来当たり前であるが最も重要なことも再確認することができた。

 4日間を通して感じたこのセミナーの魅力的なところは、講義や発表以外でも先生方や参加者と意見を交えることができることである。昼食時、懇親会、打ち上げの場で、どんなに些細な質問でも先生方は丁寧に応じて下さったため、本当に多様なお話を伺うことができた。また、全国の研究者の皆さんと知り合えたことも私の大学院生活で本当に貴重な財産となった。以上を踏まえた上であえて要望をあげるならば、これまで行われたセミナーの内容を、より詳しくパンフレットなりホームページなりに載せていただけると、参加を希望する学生もより具体的な目的を持って参加できるのではないか。最後に、このセミナーを準備して下さったスタッフの皆様、講義や議論に参加してくださった先生方には、心から感謝を申し上げたい。

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