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2008(平成20)年度 教育セミナー報告

栗林 朋史(同志社大学大学院神学研究科博士前期課程)

 今回の中東イスラーム教育セミナーでは「ムスリムと音楽」というテーマでお話をさせて頂きました。プレゼンテーションの後、大塚先生を始めとする多くの先生方からご助言を頂き、私の研究のテーマを学問的なものにするためのヒントを頂けたと思っております。

 私の発表した「ムスリムと音楽」というテーマにおけるムスリムは「五行の第一である信仰告白を公言するものは全てムスリムである」と定義されますが、このムスリム達が音楽を通じて信仰を表現する際にどの様な表現手段を用いているのか、又その表現手段には何らかのディシプリンが存在するのか、これが私の研究の大枠になると現在は考えております。

 ムスリム達の奏でる音楽の中で信仰に結びついたものには大別して「宗教的儀礼に結びついたもの」と「アーティストの個人的な表現手段としてイスラームが用いられているもの」に分けられると考えますが、前者の例が、ムハンマドがメッカからメディナに移住した際にアンサール達が奏でた「タラアル・バドル・アライナー(我らが上に月は満ち足り)」や「トルコのメヴレヴィー教団の旋回舞踏」であり、後者の例が「サミ・ユースフの楽曲」や「ヒップ・ホップ、取り分けラップの中に含まれるメッセージ」に該当すると考えられます。これらの音楽についての概要は今回のプレゼンテーションの中で説明させて頂きました。このような分類の中で、今後の私の研究は、後者のムスリムアーティストのアイデンティティーの現われとして用いられる音楽、取り分けヒップ・ホップの中に含まれるラップのメッセージを通じてイスラームと音楽の関係を読み解いて行きたい、そのように考えております。

 ヒップ・ホップはその歴史の始まりからイスラームと強く結び付いております。ヒップ・ホップのオリジネータの一人であるDJのアフリカ・バンバータはネイション・オブ・イスラームの現在の指導者であるルイス・ファラカーンの信奉者であり、彼の作った団体であるズールネイションの教義、インフィニティーレッスンはイスラームの教義を採用したものです。アメリカから始まったカルチャーのヒップ・ホップですが、現在はイスラーム圏にも広がり、イスラーム圏のラッパーは歌詞の中でアッラーに対する信仰を公にしています。ヒップ・ホップに関わっているムスリム達とそれ以外の者達の相違点は、ムスリム達のラップはイスラームの教義に根ざしたものであること、取り分けアッラーに対し帰依することを主張しています。また性的表現や暴力的主張を助長する表現はしない、ということが考えられます。

 今後の研究の課題としましては、音楽の構成要素であるメロディーやリズムの面から、ムスリムのラップアーティストがイスラームをどのように表現しているのかを読み解き、解説出来るように成れればと考えております。

 今回のセミナーは自身の研究を外部から見直す素晴らしい機会となりました。今後もこのセミナーが続くことを切にお祈り申し上げます。お忙しい中、参加して下さった先生方、本セミナーの企画、運営に携わった方々に感謝申し上げます。有難う御座いました。

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