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2008(平成20)年度 教育セミナー報告

久田 美菜(立教大学大学院文学研究科・博士課程前期(比較文明学専攻))

 「多文化共生」という言葉がここ数年、よく聞かれる。実は、私の研究対象地域はイスラームではなく、太平洋に浮かぶ島「小笠原諸島」である。1830年代に欧米系住民が住み始め、以来特定の国には属さず「雑居地帯」であったが、幕末になり近代国家作りに目覚めた幕府は、この島を急遽領土化した。欧米文化や南太平洋文化、そして日本文化―とまさに「多文化共生」の代名詞のように思える島だが、実際行ってみると「強制→矯正→共生」の歴史であったことを痛感する。フィールドワークの大切さを実感したわけだが、そんな私にとり、20年間同じ地域や同じ家族と接しながらフィールドワークを続けてこられた西井先生のご発表は、とても参考になった。また、受講生の発表に対する大塚先生をはじめとする諸先生方のコメントはとても鋭く、まさに私に言われているような気がして、身が引き締まる思いがした。

 「まったく書かれなかったことを読む」といったのはヴァルター・ベンヤミンであるが、本セミナー参加後、同じことを「イスラーム」についても感じた。私とイスラームとの出合いは、以前勤務していた某国の大使館がきっかけであり、私にとって「大使館」という狭い世界でのイスラームがすべてであった。そしてそれは確固たるものだと思っていた。だが、世界が多様化しているのと同様、イスラームも多様化しているのだということをこのセミナーを通して実感した。先生方のお言葉、受講生の発表、参加者のコメントー様々な言葉を咀嚼して、まず頭をよぎったのが冒頭のベンヤミンの言葉であった。本セミナーは、ある意味今までの私が知っているイスラームとは全く違ったイスラームとの出合いの場ともなった。改めて、様々な世界に顔を出してみることの必要性を感じた。複合アイデンティティ、共同体、境界線を生きるということー。つながっていないように見えて、私の中では研究対象(小笠原)とイスラームはそう遠からぬ存在である。それをどう表現するかがこれからの私の課題である。

 同じ大学内で、あることについて議論をすることは日々のことですが、遠方を含めた他大学の方々と講義を聞き、議論に参加できる機会はそうそうありません。自分の勉強不足を猛省すると同時に、修論で煮詰まっていた私にとり、多くのことを示唆していただいた4日間となりました。最後になりましたが、このような貴重な場を設けて下さった諸先生方や快適な環境を常に提供して下さった事務局の方々に、心から感謝申し上げます。

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