2008（平成20）年度　教育セミナー報告

　「正統イスラーム」という考え方への大塚先生の厳しいご批判が端的に表すように、中東・イスラーム世界の多様性を改めて考えさせられた貴重な４日間だった。

　本セミナーに参加して、私は主に二つのことを自覚することができた。一つ目は、「知っている」という思い込みが、対象を見る目を曇らせるということである。このこと自体、当然持ち合わせていた認識のはずであったが、いつの間にか視野が狭くなっていたのだと、イスラーム世界の多様性を示して頂いたことで痛感した。二つ目は、私の複眼的視点の未熟さである。これは反省点であるが、事前に配布されたセミナー・発表概要やレジュメに目を通すくらいのことしか出来ず、セミナーによっては初めて見聞きする内容のことも多かった。そして質疑応答になり、十分に自分の考えをまとめる事ができない回がしばしばあった。しかし他の受講生、そして先生方からはより多くの様々な質問が飛び交った。その着目点の鋭さには大きな刺激を受け、また知識不足は勿論であるが、それとは関係のないところで自分がいかに多くのことを見落としているのかを自覚した。

　これら二つの反省は私にとって非常に大きな収穫であり、自身の研究活動において、今後も常に意識すべきことである。また、普段なかなか接する機会のない他大学の院生と語り、諸先生方から研究に対するそれぞれの考えをお話し頂いたことで、文献と格闘する日々に、大きな後押しを頂いたと思う。

　最後に、過去のセミナー受講生の感想を読んで、本セミナーが年々改善されていることを感じた。まだ改善点はあるのだろうが、何よりもセミナー受講生一人ひとりの、より積極的な参加が大切であろう。

　末筆ながら、お忙しい中ご参加下さった先生方、運営にあたり細やかなご配慮を頂いた先生、事務局の皆様方に厚くお礼申し上げます。