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2010(平成22)年度 研究セミナー報告

大川 真由子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所・非常勤研究員)
 「私の博士論文――健康的・計画的な論文執筆のために」

 発表者は、博士論文を提出した2005年度を軸に、その前後約5年のタイムスパンに焦点をあて、博論の前段階にあたるフィールドワークから執筆、さらにはその後の博論出版に至るまでの過程を報告した。すでに執筆から5年の年月が経っているだけに、当時の記憶はほとんど残っていなかったものの、指導教官や同僚とやりとりしていたメールを掘り起こし5年前の生活を再構成してみると、執筆年度は非常に活動的に過ごしていたことが判明した。ディシプリンの異なる受講生にとってはあまり参考にならなかったのではないかと危惧したが、女性の人類学者としてのひとつのモデルケースを提示できればよいという程度で発表に臨んだ。

 博論執筆を「健康的」かつ「計画的」という理想的な状態にもっていくためには何が必要なのか。振り返ってみればとくに大きな問題もなく、報告者が比較的順調に執筆を進められたのには、いくつかの条件がそろっていたからだと考える。すなわち、@十分な資料と適切なテーマ、A提出先の内部規則のクリア、B経済的余裕、C健康な精神と身体、D適度の息抜きである。

 外的要因としては、所属研究室での(恐怖の)論文ゼミや雑誌論文の投稿を義務づけるスパルタ的指導体制のほか、報告者が指導教官に恵まれていたことが大きい。博論に適したテーマが見つかったのも、学振特別研究員の状態で執筆できたのも運がよかったからにほかならない。個人として努力した点は健康の維持(適度の運動と禁煙)と精神衛生管理の面ぐらいである。「孤独」にならないために、報告者は博論執筆者同士のコミュニケーションを欠かさないようにし、同僚とのコメント交換も頻繁におこなった。執筆年度も積極的に研究会に参加し、非常勤講師の仕事や研究室の雑誌編集業務などもこなした。それが逆によい息抜きになったようである。

 受講生がもっとも不安に感じるのは、執筆のペースやタイミングであるようだ。報告者は、博論の各章を構成する雑誌論文への投稿時期や、指導教官との面談の時期や回数、博論の構成が定まった時期や序章を書きはじめたタイミングなどを盛り込んだスケジュール表を提示した。そして、博論執筆の効率化のためのテクニカルな提案(資料の整理方法、文章校正ツールやオンラインストレージサービスの利用)もした。

 博論の早期提出が求められている現在、博士号は通過点、就職レースへの参戦チケットでしかない。だが、それまでの研究への区切り、けじめとして是非提出されることをお薦めする。それは自分の研究スタイルや方向性を確立するうえでも非常に重要な作業なのである。

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