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2009(平成21)年度 研究セミナー報告【前期】

長島 大輔(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)

博士論文ほどの長文の論文を一貫した理論で纏め上げるのは、大変な作業である。理論の一貫性と同時に、各章、各節では、詳細かつ正確な分析が求められる。各部分にこだわっていると全体が見えなくなり統一性が保たれなくなるが、理論の一貫性に気を使っていると、筆がなかなか進まなくなる。セミナーに参加したのは、博士論文執筆の最後の段階で、筆が止まってしまっていた時期だった。

私の博士論文のテーマは、ボスニアのムスリムにおける、宗教(イスラーム)とナショナリズムに関するものである。発表では、イスラームの側から見たナショナリズムとの接点を中心に延べ、「ボスニアのイスラーム運動の特色とナショナリズムとの接点を明らかにし、その社会的広がりを論じる」という問題設定の妥当性について諸先生方、他の参加者からご意見を頂いた。他の地域、テーマを専門とする諸先生方、他の参加者から頂いた質問、意見の中には、普段専門の近い同僚たちと議論しているときには考えもしなかったような、鋭い指摘がいくつもあった。それらは、一言でいえば自分の対象としている地域、問題関心(ボスニアのイスラーム)が、どのくらい地域特殊的で、どのくらい普遍的であるか、ということを考えさせるような指摘であった。これに答え、反論し、思い悩むことを通して、ボスニアという地域、あるいはボスニアのイスラームを、もう一度広い視点から考え直すことができた。

また、自分の論文の核になる理論の中心と、検討するべき範囲(限界)がよりクリアになった。結論を急がず、博論を超える内容については将来のテーマにすればよいとのご意見は、何でも詰め込もうと欲張って止まってしまっていた筆を、また動かしてくれた。もちろん、論文の具体的な内容についても具体的な質問とアドヴァイスを頂いた。

博論執筆経験者(斎藤剛氏)の「博論体験記」には、自分の悩みが、決して自分だけのものではなかったと知り、勇気付けられた。

他の参加者の発表に対しては、時に的外れな質問、意見をしてしまったと思うが、そのような質問、意見も、彼らにとって少しでも有益なものであったことを願いたい。お忙しい中、長時間私の発表に付き合ってくださり、率直なご意見を下さった諸先生方、他の参加者に、この場を借りて心からお礼を申し上げたい。

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