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2008(平成20)年度 研究セミナー報告【後期】

池田昭光(東京都立大学大学院社会科学研究科社会人類学専攻博士課程)

 このセミナーを通じ、「地域研究」の重要性に気づかされたことは、思わぬ、しかし結果としては一番の収穫であった。参加者の研究発表に対して、スタッフがコメントをしたり、議論をしたりするのを聞いているうちに、ここにあるのは「地域研究という場」だ--私の場合は「中東地域研究」--と思った。私自身の専攻が社会人類学であることから、普段の研究上の関心は、人類学一般と、自分のフィールドであるレバノンに限られる傾向にあった。そこでは、フィールドワークから得られる、一地方ないしは一都市の事例と、超地域的な人類学的理論とが、ともすればひとっとびに結びつけられる嫌いがある。その思い切りが人類学の魅力であるのは確かなのだが、セミナーでは、いわばフィールドの個別と人類学理論の一般との間に、地域研究という問題--中東地域が中東地域として抱える問題を検討することの必要性--があることに思いいたったのである。

 これは、「地域研究はディシプリンではない」式の言いかたに慣れた身としては、新鮮な発見であった。たしかに、地域研究は、独自の理論にもとづいて成立している分野ではないのかもしれない。しかし、それが「理論」という言葉では言えないような「場」であるからこそ重要なのだ、ということがあるのではないか。その「場」が意識されなければ、人類学的なフィールドというミクロは、うまく支えられないまま、はったりのようにして「理論」に回収されてしまうのではないか。こうした発見をもとに、「リアリティ」を保証するものとしての地域研究ということを今後考えてみたいと思った次第である。

 このような、自分に決定的に欠けているものが意識される、その意味では緊張させられる機会ではあったのだが、しかし全体としては、思ったよりもリラックスした雰囲気があった。実際の研究発表では、参加者からの疑問や反論に対して、不必要に構えることなく、素直に、自分の思ったところを答えられたように思う。こうした雰囲気作りは、スタッフによる、意識的・無意識的な努力に負うところが大きいだろう。このような貴重な機会が与えられたことに対し、あらためてお礼を申しあげる次第である。

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