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2008(平成20)年度 研究セミナー報告【前期】

鳥山純子(お茶の水女子大学大学院人間文化研究科ジェンダー学際研究専攻)

 中東・イスラーム研究セミナーは、研究の到達度や研究分野という点で、私にとって関係の薄いプログラムであるという認識をもっていた。また先生方による辛口の厳しい指導という情報が先行し、苦行を強い、それを克服することをその本分とする「修行」的プログラムであるという印象を漠然と抱いていたことも否定できない。

 しかし実際のセミナーを経験した今、それが大筋で間違っていたかはともかく、こうしたイメージには少なくともいくつかの注が必要であったと考えるに至っている。とりわけ、参加者としての私にとって多くの具体的な成果があったことは強調をしたい。本セミナーから私が得ることができたのは「修行」が想起させるような苦行にとどまるものではなかったのである。

 セミナーで得られた成果には、データのプレゼンテーションに関するものから分析概念における矛盾の整理まで様々ある。しかし自分の研究に関する具体的な収穫以上に、本セミナーが、私自身の研究との関わりやその方向性に関して熟考する機会になったことが特に有意義であったと感じている。ここではセミナーにおいて特に私が揺さぶられたと感じる二つの点について触れておきたい。

 まず一つ目は、学問領域を超えた研究の可能性を目の当たりにさせていただいたことである。現代エジプト都市部における現象についてジェンダーや人類学といった分析視角・手法で考察をしてきたなかで、私は自分の研究がともすれば他の学問領域で中東を扱う研究者に理解されないものであるという錯覚をいだいていた。しかしそれぞれの参加者に対する先生方の質問やコメント、またそこで重要視されている根本的な姿勢などを直接目にする機会を得て、例え学問領域が異なり、扱う資料や手法が異なっていても、それぞれの研究はお互いを補い、利用し合うことが可能なものであり、またそれができる研究こそ良質なものであることを痛感した。

 二つ目は、研究者として「研究」に対する真摯な姿勢を見せていただいたことである。セミナー参加者には学問領域の違いやそれぞれの研究における達成度や進捗状況に差異があった。しかしそれにもかかわらず、先生方がどの研究発表にも真剣にとりくまれていることは明らかであった。もちろん参加者の発表の完成度が高ければ高いほど有意義な議論の発展があったことはいうまでもないが、参加者それぞれの発表に手をぬくことなく全力であたられる先生方の姿からは、「研究」に対する厳しい姿勢を見せ付けられた。

 セミナーは、こうした空気を体感できるだけでなく、自分自身も同じ真剣度で応答を迫られる特殊な空間であった。私自身のことを言えば、姿勢一つとっても、とても先生方の真剣度には遠く及ばなかった。しかしこの空気をリアリティとして経験できたことは今後研究において高みを目指すうえで重要かつ必要な経験であったと考えている。

 こうした点は以前にセミナーに参加された先輩方も指摘するところであり、新しいものではないかもしれない。しかし百聞は一見にしかずとは言いえて妙で、やはりこれらは自分で目の当たりにして初めて感じることができるものである。今後中東・イスラーム関連の研究を志される方には本セミナー受講を強く勧めると共に、自分が得ることのできたこの経験をより多くの方に体験していただけるよう、セミナーの存続の道を模索していただけるようお願いしたい。

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