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2008(平成20)年度 研究セミナー報告【前期】

藤波伸嘉(東京大学大学院総合文化研究科地域文化研究専攻博士課程)

7月24日から26日にかけて開催された今回の中東・イスラーム研究セミナーは私にとって極めて有益なものだった。このセミナーは今年で既に四年目を迎えたとのことで、事務手続きからスタッフの対応に至るまで、企画として既に軌道に乗っているという印象を当初から受けた。スタッフの先生方が各発表者に投げかける質問も極めて真剣かつ厳しいものであり、しかしながら常に教育的配慮の行き届いたものであった。また高松氏の「私の博士論文」も非常に興味深く面白いものであった。

四人という今回の受講者の人数も、日程等を考慮した場合に理想的なものではないかと感じられた。一日に何人も詰め込むよりは今回のように少人数で余裕をもって発表を回していく方が、発表をする側としても聞く側としても有益であり生産的であるように思われる。最終日には改善点を最低一つは挙げるよう言われたのだが、ほとんど改善すべき点も見出せなかったのが正直なところである。

さて、私自身は必ずしも普段から「中東・イスラーム」の専門家や院生と親しい訳でもなかったので、応募時には一体どのような人々が参加するのかと楽しみにも不安にもなっていたが、蓋を開けてみると、何と四名中、私を含めて三名が末期オスマン史・トルコ史を専攻している互いに既知の院生であり、しかも「私の博士論文」を話された高松氏もまたオスマン史の研究者であった。このように手法や地域、そして時代を近くする研究者が、博士論文構想という各々の研究の精華を真剣に発表する場に居合わせ、それを吸収することができたのは、私自身の研究に裨益するところが大きかった。

だがその一方で、もう少し専門の異なる人々の発表を聞いてみたかったという気持ちがあるのも事実である。翻って考えてみれば、今回のセミナーにおける私の最大の反省点の一つは、私自身が人類学について全く門外漢であったため、鳥山氏の発表の際にほとんど貢献することができなかったことである。もう少し受講者の専門とする手法や地域がばらけていれば、逆に「門外漢」であることは前提となるので、質疑の仕方などを含め、専門の異なる人の発表に対する参加の在り方について学ぶところも大きかったのではないかとも思える。受講者の構成は誰が応募してくるかに左右される問題であり、それを事前に設定することには弊害も大きいであろうから難しい問題だが、将来的に何らかの対策が講じられてもいいのではないかとは感じた。

ともあれ、これだけの高水準のコメントを頂ける場で博士論文の構想について議論を行なう機会が確保されているのは非常に意義のあることであると感じた。学会や研究会での発表ではどうしても時間も限られ、またその性質上も特定の一論点に即した議論に収斂せざるを得ないが、博士論文構想という、そうした個々の論点自体をどのような議論の流れ、枠組みに位置付けるべきか、という次元での討論を公に行なえる場は少ないのが現状ではないかと思う。その意味でこのような場が今後も存続し発展することを強く期待する。来年でこのセミナーはとりあえずの区切りになるとのことだが、是非その後にもこのような企画を継続していって欲しいと願うものである。

また、既に毎年の受講生が記しているように、恒例となっている懇親会や昼食の場での交流も非常に有益なものであった。これまで本や論文を通してしか知ることのなかったスタッフの諸先生方と直接このような場で様々な話を聞くことができたのは興味深くかつ有意義な体験であった。このような経験を得る機会を与えてくださったスタッフの諸先生方、そして事務の千葉さんに対し、感謝の意を表してこの感想の締め括りとしたい。

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