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研究セミナー >> 2007年度感想・報告 >> 錦田愛子
2007(平成19)年度 前期
錦田愛子(東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所非常勤研究員)
「私の博士論文 ―博論提出に必要な条件―」

 報告者は1年前の研究セミナーに受講生として参加し,博論執筆の上での非常に貴重な助言を本研究所の先生方からいただいた。それらに基づき書き上げた博論を提出し,今年3月に博士号を取得したばかりである。2003〜2005年のフィールドワークからの帰国後1年半で完成させた論文,という意味では比較的早い執筆だったといえるだろう。そのぶん内容については練りの足りない面や,不勉強な点もいまだ多いと自覚している。だが研究職への就職に際して博士号が大前提とされつつある現状において,「博論提出」は避けがたい登竜門である。従って,いかに拙速ではあってもその目標を達成した一例としては,自分の体験談をお話しすることに意味はあるだろうと捉え,本報告をさせていただいた。

 報告ではまず,自分が経験した博論提出までのタイム・テーブルを簡単に述べ,次に副題にも挙げたとおり,博論を書く際に必要だった条件をふりかえって整理した。続いて博論執筆の過程で習得した自分なりの論文執筆の手順について料理にたとえながら話し,最後に博論に集中することで犠牲になるもの,また博論を書き上げて得られるもの(博士号以外)について述べた。

 博論を書く上で最低限必要なのは,当然ながら資料である。報告者の場合,ヨルダンおよびパレスチナにておこなった聞き取り調査による一次資料がその核となった。また調査および執筆の過程では,必要経費を確保し,比較的マイペースで過ごせる生活環境を整えることが作業に集中するために重要である。あとはひたすら論文執筆に打ち込むのみであるが,その際に自分の中で中長期的に締め切りを設定していくことは,いい意味でのプレッシャーや切迫感を保つのに役立つ。締め切りは厳守(!)である。容易に破られる締め切りに意味はない。

 こうして博論のみに全力投球していくことで,その他の研究業績や研究会への出席率,交友関係等は多少損なわれるが,どこまでそれらを削るかは個人のバランス感覚次第である。いずれにせよ博論提出後は,好むと好まざるとに関わらず,博論のテーマにとどまらないより広い問題関心に基づき研究報告を求められることになる。それまでに特定のテーマについてとことん吟味を尽くす作業を経験しておくことは,重要なプロセスであったと思っている。
 

 

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