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アーイダ・カナファーニー=ザハール博士 Dr. Aïda Kanafani-Zahar
- 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 『通信』 第121号より
AA研は、アーイダ・カナファーニー・ザハール博士を、2007年10月1日から2008年2月29日までの5ヶ月間、客員教授としてお迎えいたします。レバノンはベイルート生まれのカナファーニー博士は、レバノン大学社会科学研究所にて社会学・人類学を修められた後、1979年にテキサス大学オースティン校で博士号を取得されました。そして同年、内戦の最中のレバノンに帰国され、レバノン大学社会科学研究所助手、同助教授を務められた後、内戦終息後の1991年からパリに研究の拠点を移されました。人類学博物館(Musee de I'Homme)客員助教授を務められた後、1995年からはフランス国立科学センター(CNRS)の社会・宗教・世俗問題研究グループの主任研究員を務められています。
さて、レバノンの国内人口はわずか400万人ですが、在外レバノン人・レバノン系人の人口は、南北アメリカ、西ヨーロッパを中心に1200万人にのぼるといわれています。西アフリカ諸国やオーストラリアにも多くのレバノン人コミュニティが存在します。しかも各地の政治・経済・文化各界で活躍する人が多く、かつて地中海各地へ乗り出して植民氏を建設したフェニキア人の末裔、というレバノン人の性格をよく表すものです。日本にいるレバノン系人として著名なのはカルロス・ゴーン(アラビア語名ゴズン)さんですが、このように現在は一口に「レバノン人」といっても、それはこの地中海の小国に住む人々だけでなく、パスポートを二つ三つもって世界中に拡散している人たちをもさすわけです。
カナファーニー博士も、今回はフランス人として来日されますが、もちろんレバノン人研究者という顔もお持ちです。そしてその人類学・社会学者としてのお仕事も、多様で多彩です。これまで主にフランス語であまたの著作・論文を発表してこられましたが、それらがカバーするテーマは、レバノンとアラブ首長国連邦でのフィールドワークに基づいた家畜・植物なども含めた物質文化論、生活文化と儀礼、食文化、農村と市場経済、衣服と装飾文化、東方キリスト教の宗教儀礼、農村における多宗派共生、共同体における他社の存在を前提とした紐帯、異宗派間婚姻関係の歴史と法的問題、レバノン内戦の暴力の記憶、内戦後のレバノン社会における平和構築などなど、実に多岐にわたります。こうした多数の論文・著作に加えて、短編ドキュメンタリー映画として「レバノン:戦後の和解」、「聖心祭:レバノンのビーリーにおける帰還の祝祭」を2004年に制作されたほか、アメリカ、フランス、イタリア、レバノンの各地で写真展を開催されるなど、映像を通じた研究の蓄積・発信も活発に展開していらっしゃいます。
日本には本年3月に日仏会館の招聘で短期間いらしたのが初めてで、今回は2回目です。食文化の専門家でいらっしゃることもあり、日本の食をめぐる諸問題にも強い関心を持たれています。気さくでフレンドリーな方ですので、みなさん、どうぞよろしくお付き合い下さい。
(文:黒木英充)