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アブデルラヒーム・ベンハッダ教授 Prof. Dr. Abderrahim Benhadda

  • 東京外国語大学アジア・アフリカ言語文化研究所 『通信』 第112号より
  • ベンハッダ教授は,1959年モロッコ南部の美しい古都マラケシュの生まれで,モロッコ北部のこれまた美しい古都フェズのフェズ大学で歴史学を専攻,博士号を取得されました。学位論文のタイトルは「16-18世紀におけるモロッコとオスマン帝国」です。フェズ大学助教授を経て,現在モロッコの首都ラバトにあるムハンマド5世大学人文学部教授をつとめられています。

    ベンハッダ教授の博士学位論文のタイトルから明らかな通り,御専門はモロッコとオスマン帝国の関係史で,さらに発展して,モロッコとヨーロッパ諸国の関係史,大西洋沿岸部も含めた地中海世界における文化交流史にまで広がる研究に従事されています。『オスマン帝国と地中海世界一新たなアプローチ』,『アラブ・イスラーム世界における旅一交流と近代性』(いずれも編著,2003年)など,アラビア語・フランス語による論文・著書が多数あります。

    ベンハッダ教授は1987年から91年にかけて,イスタンブルの総理府オスマン文書館にて長期の資料調査に従事されました。この間に先の湾岸戦争が起こったのですが(1991年),私は日本大使館発令の退去勧奨により,長期滞在先のシリアから一時的にトルコに移って「難民生活」を強いられました。そのとき初めてベンハッダ教授と文書館でお会いし,親しくお付き合い頂きました。その縁もあって,2003年2月に私は長期滞在先のイスタンブルからモロッコを訪れ,ムハンマド5世大学で講演する機会を与えて頂きました。

    アラブ諸国の多くがオスマン帝国の支配を受け,そこから独立して国民国家を建設してきたという事情から,一般にアラブ人歴史研究者の仕事内容もナショナリズムの影響を色濃く受けています。従って,現在アラブ諸国とトルコ共和国の間の学術交流も低調で,オスマン・トルコ語文書を使う/使える研究者は,実は驚くほど少ないのです。自国内のアラビア語文書資料とヨーロッパ側の資料だけに依拠して仕事する研究者がほとんどといって過言でありません。

    そうしたなか,ベンハッダ教授は例外的な存在です。最初からオスマン帝国とモロッコの交流関係を研究対象に据え,トルコ人研究者と活発に交流してこられました。それは,モロッコがオスマン帝国の版図に入ることがなかったという歴史的事情だけでなく,何よりも,ベンハッダ教授ご自身の視野の雄大さと多角的に研究を展開される力量のゆえだろうと思います。母語のアラビア語(古典語とモロッコ方言。この二つは私が耳にする限り全く別の言語です)に加えて,フランス語トルコ語を完壁に話され,英語とスペイン語も使われるマルチぶりに,それが表れています。(さらに付け加えるならば,この滞在期間中に日本語の習得も目指されています。)

    ベンハッダ教授の地中海を股にかけたお仕事が,AA研の研究活動に新たな厚みを加えてくれることを期待しています。とりわけ私が主査をしております共同研究プロジェクト「東地中海地域における人間移動と『人間の安全保障』」に寄与して下さることを願っております。ムハンマド5世大学の学生さんたちが,いかにベンハッダ教授を慕っているかは,2年前に訪問した時に目の当たりにしました。また緑溢れるラバト南部郊外の,大西洋岸に近い爾西なお宅では,8歳と5歳の男の子がこの優しい父親の帰りを心待ちにしています。

    (黒木英充、2004年11月25日)

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