インドネシア語新聞翻訳
2010年1月10日(月)
【レプブリカ紙】


コーランの解釈の拡大

【デポック】
 コーランは様々な分野において、イスラーム教徒が直面する諸般の問題に答えることができる。しかし、コーラン研究センター設立者及びセンター長のクライシュ・シハブ氏は、残念なことにイスラーム教徒はコーランをまだ全体的にきちんと理解していないと語っている。インドネシアにおけるコーランの理解は、未だ解釈のひとつの形とパターンに限定されている。

 「その結果、コーランの特徴が完全に理解されていない」と同氏は、1月9日(日)西ジャワ州デポック市ベジ郡のクリヤトゥル・クルアン・アル・ヒカム・高等専門学校のオープニングにおける最初の一般講義の中で述べた。彼はその例として、喜捨(訳注1)の義務を果たすとは単に金銭を払うことだ、とまだ理解されていることを挙げた。

 彼によると、インドネシアにおけるこのような理解が、結局は喜捨を貧困を披露する活動にしてしまっているという。このことは、例えばラマダン月(訳注2)の大量の喜捨を配布するときに起こる。彼は、コーランの喜捨に関する節が、義務を果たすための金銭支払いと理解が限定されており、貧困を改善するためとは方向づけされていない、と語った。

 〔コーランのこの節には〕もっと広い解釈があるべきだ、と同氏は述べた。その意図は単に金銭を払うことではなく、それ以上のものだ。すなわち、喜捨を集め、配分し、有効活用する上で一貫性が存在することだ。コーランは時代の状況に従って解釈されるが、その解釈はしっかりした土台に基づいていなければならない、と彼は説明した。

 シリアのダマスクス大学のワバー・アル・ズハイリ教授も同じことを述べている。彼は、ウラマ(訳注3)たちは、イスラームの教えと現在の状況に沿った解釈を提供するよう、真剣に努力することが要求されていると語っている。今日、コーランの内容と意味を理解するためにコーラン注釈学が大いに必要とされている、と彼は明言した。

 イスラームの信者が広がり、その数が全世界でますます増えている現在、コーラン注釈学に対する必要性は高まっている。彼はまた、コーラン解釈の取り組みがアラビア語の教育と習得によって強化されることを期待している。「これはイスラーム寄宿塾、国立イスラーム学校、あるいは大学での教育を通して達成できる」

 インドネシアはその住民の大部分がイスラーム教徒である国として、アラビア語研究の発展と向上が期待されている。この言語が習得されたならば、コーランの価値をイスラーム信徒の日々の生活の中に浸透させるための端緒になる、と彼は説明した。

制度化
 スルヤダルマ・アリ宗教大臣によると、コーランを理解し、その教えを実践するには制度化された体系的な教育システムが必要だ。さまざまな取り組みが、特にコーラン教育連盟を通じて、コーランの普及のために行なわれている。そのほか、コーランを理解する方法は多くある。

 彼はこのような取り組みが、文化と社会の趨勢の進展にともなって広がっていくだろうと確信している。しかし、仔細に見ると、一定のレベルに到達する必要のある取り組みが、特にコーランの普及をはかる取り組みにおいて、まだ見られる。

 これまでの取り組みは比較的儀式的な点に限られており、本質的ではなかった。スルヤダルマ大臣は、例としてコーラン読誦コンテスト(MTQ)の活動を挙げた。MTQはまだ儀式的、形式的な性格が強いと彼は見なしている。それだけでなく、コーラン読誦はまだ意味の汲み取りにおいて、通常の読み方の範囲を出ていない。

 そのため彼は、クリヤトゥル・クルアン・アル・ヒカムのような高等教育機関が、インドネシアのイスラーム信徒の質を向上させ、コーラン研究の中心になる役割を持つことを望んでいる。「コーランの思想と解釈だけを学ぶのではなく、信徒がイスラームに則って行動するよう、後押しすることができなくてはならない」

 一方、デポック市にあるクリヤトゥル・クルアン・アル・ヒカムの創立者であるハシム・ムザディ氏は、この教育機関を通じて、イスラームを神の恵みとして広めたいと言明した。この機関は東ジャワ州マランにあったアル・ヒカムを継ぐものだ。

 クリヤトゥル・クルアン・アル・ヒカムは二つの機関、すなわち高等専門学校とイスラーム寄宿塾からなっている、と同氏は説明した。高等専門学校は、すでにコーランの全ての章句を暗誦している人たちのためのものだ。一方、イスラーム寄宿塾は、優秀な学生であるが、まだ宗教教育を体験していない人たちのためのものだ。「アル・ヒカムは学識ある人たちを神の前に正しい人にし、神の前に正しい人たちを学識ある人にする」と同氏は語った。


訳注
1) 喜捨: 所有財産・収入の一部を貧者に施すことで、イスラーム教徒にとっては義務かつ善行。喜捨には宗教的義務のザカートと自発的に行なわれるサダカがある。本文の場合はザカートを指す。
2) ラマダン月: イスラーム暦の9月。断食月
3) ウラマ: イスラーム教の宗教指導者、法学者


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so1101101hy)

原題:Perluas Tafsir Alquran
http://koran.republika.co.id/koran/14/126788/Perluas_Tafsir_Alquran


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