インドネシア語新聞翻訳
2010年10月8日(金)
【レプブリカ紙】


メッカ大巡礼に選択肢が

 スペシャル版のメッカ巡礼(訳注1)を手がける企業を傘下に100社以上持つインドネシア・メッカ巡礼催行イスラーム連盟(AMPHURI)は、やがて一つのコンソーシアム(訳注2)を結成することになるだろう。メッカ巡礼の催行は常に人々の関心を集めている。関心を集めないはずがない。インドネシアは毎年20万人以上の巡礼団を聖地に送り込んでいるからだ。宗教省は主催者として巡礼義務を成功させるために、超ハードワークを余儀なくされているのだ。

 メッカ巡礼催行に対する批判と賞賛は毎年いつも出てくる。輸送手段、宿泊施設、それに食事の問題が、通常注目を浴びる大きな問題だ。巡礼手配の成否は、実は巡礼団が受けるサービスの良否によって評価される。

 毎年出発する巡礼団の数が飛躍的に上昇すのるに伴って、巡礼催行に関する議論も沸き起こっている。〔現在、政府のみが取り扱っている〕レギュラーの大巡礼催行〔の分野〕に、民間を参入させることは可能なのか? メッカ巡礼の旅は新しいことではない。オランダ植民地政府時代からメッカ巡礼は始まっていた。

 M. ディエン・マジド氏は著書『植民地時代のメッカ巡礼』の中で、1891年から1893年までの間インドネシアからの巡礼団の数は変動があったものの、全般としては増え続けたと述べている。そこで政府は民間にメッカ巡礼団の出発と帰国の手配に参入するよう勧誘した。

 「それ以来インドネシア人、ヨーロッパ系、あるいはアラブ系の人たちが設立したメッカ巡礼の旅行会社や代理店が現れた」とディエン氏は述べている。しかし、メッカ巡礼手配への民間の参入は長くは続かなかった。これら民間会社が利益追求を優先し、サービスをないがしろにしていたからだ。

 1960年代に政府は、レギュラーの大巡礼催行〔の分野〕に民間を参入させたことがあった。しかし、またもや民間はその使命をきちんと果たすことが出来なかった。この歴史上の経験のため、政府は民間がレギュラーの大巡礼の催行〔の分野〕に参入することに対して厳しく門戸を閉ざしてきた。

 現在、レギュラーの大巡礼に関する議論が再び起きている。この議論を起こしているのがAMPHURIだ。AMPHURIのフアド・ハサン・マシュール総裁は、機会を与えられればレギュラーの大巡礼催行に参加する用意があると言明している。

 彼によると、スペシャル版の〔小〕巡礼を催行する企業を100社以上を持つAMPHURIは、民間が〔現在政府のみが行っている〕レギュラーの大巡礼手配〔の分野〕に参加できるようになれば、ひとつのコンソーシアムを結成することになるだろうと言う。このコンソーシアムは、マハラニ・バングン・プルサダ社という名前になるだろうと同総裁は語った。

 「レギュラーの大巡礼団を手配する機会を与えられたら、AMPHURIのメンバーはコンソーシアムを結成する用意がある。コンソーシアムは、メッカ巡礼の義務を遂行したいインドネシアの人々を手助けするという崇高な目的を持つ」と彼は本紙に対して語った。

 AMPHRIは確かに意欲を持っているだけではない。彼らはスペシャル版の巡礼催行を手がけた経験を何年も持っている。ホテル業界から交通手段、その他に及ぶ、彼らのサウジアラビアにおける様々な分野におけるネットワークは、民間としてレギュラーの大巡礼催行に参加するにあたって、確かに大きな資産となっている。

 フアド総裁は楽観的でさえある。同じ価格なら、彼らはよりよい施設とサービスを提供できるからだ。「それがわれわれの保証だ」と彼は述べた。彼によると、大巡礼の催行に民間が参加することは比較の対象ができることになる。その結果、巡礼団はよりよいサービスと施設を得るための選択肢を持つことになる。

 彼は、1960年代の経験の理由だけで民間には出来ないと早々に烙印を押すのは公平ではないと考えている。「われわれが常に過去のみを見ているのであれば、非常に残念なことだ」と彼は述べた。政府は民間が参入しても恐れる必要はない。なぜなら人々はどちらが信用できるか出来ないかを選ぶことができるからだ、と彼は語った。

 同総裁によれば、民間がレギュラーの大巡礼催行〔の分野〕に参入〔できるように〕するため、メッカ巡礼催行に関する2008年法律13号を改訂する時がすでに来ている。「この世界で変えることが出来ないのは聖書コーランだけだ」と彼は述べた。

 宗教省メッカ巡礼局のアブドゥル・ガフール・ジャワヒル事務長はメッカ巡礼に関する議論は、実は1999年法律第17号の改訂提案があったときにすでに充分にされており、それが結果的にメッカ巡礼催行に関する2008年法律第13号になったのだと語った。

 その時、国民議会の特別委員会はメッカ巡礼の利害関係者とイスラーム諸団体を会議の討論会に招き、彼らの意見を代わる代わる聞いた。その結果、メッカ巡礼の手配は引き続き政府が行なうことで合意されたのだと彼は語った。政府には独立した委員会、すなわちインドネシア・メッカ巡礼監視委員会が付き添っていた。「植民地時代の巡礼の歴史の本を読めば、民間が手がけるのには多くの問題がある。結局巡礼団は民間の利益追求の犠牲になる」と同事務長は述べた。

 政府が手がけるレギュラーのメッカ巡礼の催行が人々を満足させ得ない限り、議論はいつも起きるように思われる。


訳注
1) スペシャル版のメッカ巡礼: メッカ巡礼には、イスラーム教徒の義務である五行の1つとして、一年のうちの特定の期間(イスラーム暦12月の上旬から中旬)に行う大巡礼(ハッジ)と、それ以外の時期に行う小巡礼(ウムラ)とがある。本記事では、内容に即して両者を指す場合は単にメッカ巡礼と記載し、どちらかに特定する場合はそれぞれ大巡礼、小巡礼と記載した。また本記事が述べる「レギュラーの巡礼」とは政府が斡旋手配している巡礼を、「スペシャル版巡礼」とは政府のものよりもグレードが高く民間が手配する巡礼を指す。
2) コンソーシアム: プロジェクトの達成などのために複数の企業が一時的に結成するグループ


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so1010081hy)

原題:Menimbang Penyelenggaraan Haji
http://koran.republika.co.id/koran/52/120591/Menimbang_Penyelenggaraan_Haji


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