インドネシア語新聞翻訳
2010年3月12日(金)
【レプブリカ紙】


宗教組織の役割が低下

【ジャカルタ】
 イスラーム宗教組織の役割、特に社会的役割が低下している。しかし〔1949年の〕独立以前からオルデ・バル(訳注1)まで、その社会的役割は非常に大きかった。シャリフ・ヒダヤトゥッラー国立イスラーム大学社会政治学部のバーティアル・エッフェンディ学部長は、この低下はイスラーム宗教組織の政治分野への進出に起因すると述べた。

 「現在イスラーム宗教組織のエネルギーは政治に吸収されている。ナフダトゥル・ウラマ(訳注2)やムハマディア(訳注3)はここ10年間よりもオルデ・バル時代の方が、さらに多くの社会貢献事業を行っていた」木曜日(3月11日)にジャカルタのインドネシア科学協会〔LIPI〕で、「改革時代にイスラーム宗教組織の社会政治的役割を再認識する」というセミナーの中で、同学部長はそう述べた。

 同学部長によれば、オルデ・バル時代には宗教組織は政治活動をすることは禁じられ、ナフダトゥル・ウラマやムハマディアによってむしろ多くのマドゥラサ(訳注4)、イスラーム寄宿塾、病院が建設されたという。現代では彼らの建設するものに宗教的な社会貢献活動〔に結びつくもの〕はひとつもない。存在したとしても既存のものを継続しただけだ。

 同学部長は次のように述べた。スハルト政権時代には、ナフダトゥル・ウラマやムハマディアはインドネシアの二大イスラーム宗教組織として、きわめて大きな価値を持っていた。「政府はナフダトゥル・ウラマとムハマディアを常に考慮に入れていた。両組織とも圧力をかけられることでさらに存在感を増していた」

 一方、同学部長は次のようにも述べた。イスラーム宗教組織が出したファトワに〔信者は〕あまり留意していない。イスラーム宗教社会組織から〔の人材〕も含め、宗教有力者たちに対するイスラーム信者の道徳心の低下が起こっているからだ。ムハマディアが伝えた喫煙に関するハラムのファトワにメンバーが従うかどうか、同学部長は確信がないという。

 「ムハマディアの誰が喫煙禁止のファトワに従うだろうか」と同学部長は尋ねた。ナフダトゥル・ウラマについても同様だとし、同学部長は次のような例をあげた。前回の大統領選の〔前哨戦となる〕総選挙で、ナフダトゥル・ウラマとムハマディアはある候補者を選ぶようにメンバーに指示したが、両組織のメンバーは共にその指示には注意を払わなかった。

 同学部長は付け加えた。ムハマディアにしてもナフダトゥル・ウラマにしても、〔組織の〕宗教有力者の見解は現在政府からあまり配慮されていない。この状況は最悪だ。宗教組織の本来の役割を取り戻すために、宗教組織の宗教有力者たちは、実際の政治に関与するべきではない。

 同学部長によれば、ナフダトゥル・ウラマやムハマディアはインドネシアのイスラーム宗教組織の代表だ。「歴史的にもその両組織は、社会の人々にとって身近な存在だった」したがってその両組織は、社会の人々に再び焦点を合わせることが期待される。

 ムハマディア中央指導部議長である、ハエダル・ナシル氏は次のように述べた。ムハマディアやナフダトゥル・ウラマを含む宗教組織が衰退している、という見解は健全なものであり、それぞれの組織改善のためのエネルギーとなる意見だ。特にムハマディアはこの意見によって役割変遷を明示することが期待されるとし、同議長はさらに述べた。

 少なくともその変遷とは、政治組織としてではなく社会組織として、ムハマディアの役割を再び揺るぎないものにすることだ。「このためムハマディアは、社会の人々を強化する努力を確固として続けるつもりだ」

 同議長はさらに次のように述べた。設立100周年を迎えたからこそ、ムハマディアは活動を変化させ、社会活動にさらに焦点を合わせるべきだ。その活動はムハマディアの役割を〔本来の〕レール、つまり「よい行動を行い、卑劣な行動を禁止する」布教活動に引き戻すことになるだろう、と同議長は確信している。

 同議長は付け加えた。ムハマディアは、これまで一貫して市民の強化に焦点を合わせた組織としての役割を果たしてきた。ムハマディアとしては政治分野にかかわっていないと同議長はみなしているが、ムハマディアに政治活動をするメンバーがいることは確かに認めている。

 一方、ナフダトゥル・ウラマ理事会のマシクリ・アブディッラー議長は次のように述べた。これまでナフダトゥル・ウラマは、常に社会の中での役割を果たしてきた。教育や布教における役割を現在もなおナフダトゥル・ウラマは果たしている。
【c13,ed:ferry記者】


訳注
1) オルデ・バル: 「新秩序」の意味。具体的には、スハルト政権下の1963年から1998年までの時期を指す。スハルト以前のスカルノ政権時代は、オルデ・ラマ(旧秩序)と呼ばれる
2) ナフダトゥル・ウラマ: インドネシアの伝統主義的イスラーム組織
3) ムハマディア: 改革派イスラーム団体
4) マドゥラサ: 宗教省所管のイスラーム系の学校。小学校、中学校、高等学校がある

(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:so1003121kk)

原題:Peran Organisasi Keagamaan Turun
http://koran.republika.co.id/koran/14/106000/Peran_Organisasi_Keagamaan_Turun



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