インドネシア語新聞翻訳
2009年10月31日(土)
【レプブリカ紙】


伝道はまだ隅々まで行き渡たらず

【ジャカルタ】
 草の根クラスの多くのイスラーム信徒たちが、まだ伝道に接していない。インドネシア・モスク連盟事務長のナッツィール・ズバイディ氏は、これまでウラマ(訳注1)、キヤイ(訳注2)そして宗教界の有力者たちはエリート主義的な傾向があったと語った。

 彼らは特定の社会グループの人たちのみに伝道を行い、草の根クラスの人々を軽視してきた、とナッツィール氏は語った。「伝道が社会の隅々にいる草の根クラスの信徒にまで届くこともなければ、彼らに接触することもなかった」と彼は昨日ジャカルタで語った。

 しかし、実際には彼らこそが誘惑に全く無防備な人たちなのだ。なぜなら、彼らはキヤイやウラマに広く接触する手段を持たないからだ。教育の面でも彼らの程度はいまだ低く、宗教の知識に関しても同様だ、と彼は説明した。

 また、彼らはウラマやキヤイと接触する手段を持たないため、啓発を受けることも難しい。「まさにこのような人たちが宗教を間違って理解する可能性があり、その結果、異端の流派が多発し、果てはテロリズムに至ることになるのだ」と同氏は述べた。

 このような状況下では、あらゆる社会階層の人たちが伝道活動に接することができるように、ウラマやキヤイたちはこれまでやってきた伝道の方法を変え、人々の中に直接降りてゆくことが望まれる、と彼は語った。

 同氏によると、ウラマたちは伝道を面と向かって行うことも可能であり、さらに草の根クラスの信徒たちの家から家へと訪問して伝道することも可能だ。「このような伝道方法は、たとえば単にテレビに出ることよりもずっと効果的だ」と彼は断言した。

 伝道活動に従事する人たちは信徒の心の中に入り、訴えるべきだ。直接顔を合わせれば必ず忘れがたい印象を残すことができ、彼らに語る伝道の内容も彼らの心に容易に浸透し、簡単に消えることがない、と同氏は語った。

 このような伝道はワリ・ソンゴ(訳注3)が行った伝道方法だ、と同氏は述べた。

 宗教省は研究・開発部を通して伝道方法を変える運動の先鋒一つを務めることが期待される、と同氏は述べた。なぜなら伝道は、郡部にいたるまでのネットワークを持っている宗教省の基本的な任務の一つであるからだ。

 一方、ナフダトゥル・ウラマ(訳注4)の伝道部長ヌリル・フダ氏は、伝道は誠実にしっかりと行い、アッラーの恵みを期待すべきであると語った。「このような誠実な伝道こそが草の根クラスの信徒たちに容易に受け入れられ、彼らの心に浸透するだろう」と語った。

 ヌリル氏は、最近多くのキヤイあるいはウラマが誠意なしに伝道をしていると嘆いている。彼らは単に物質的な見返りを期待して伝道を行っているが、これは大きな間違いで、伝道は誠意と全き倫理感と礼節を持って行われるべきだ、と述べた。

 伝道の合間に差し挟む冗談やジョークは別に構わない、とヌリル氏は述べている。このようなジョークは伝道の内容が容易に心の中に入ってゆく助けになると彼は評価している。

 同氏は、キヤイとウラマが変わるべき時がすでに来ていると語った。彼らはこれまで行ってきた伝道方法が正しかったか、自分自身に問いかけてみるべきだ。伝道がますます盛んになっているのに、悪と罪深い行為が増えているのであれば、伝道方法の見直しが必要だ。

 ヌリル氏によると、良き伝道とは怒りの言葉を発しながら行われる伝道ではない。


訳注
1) ウラマ: イスラームの宗教指導者、法学者
2) キヤイ: イスラーム教に関し深い学識を持つ長老格の人に対する尊称
3) ワリ・ソンゴ: 9聖人という意味。15世紀末から16世紀はじめころにジャワにイスラーム教を伝えた9人の聖者
4) ナフダトゥル・ウラマ: インドネシアの伝統的イスラーム組織


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so0910311hy)

原題:Dakwah Belum Sampai Pelosok
http://www.republika.co.id/koran/14/86062/Dakwah_Belum_Sampai_Pelosok



ISEA インドネシア語新聞翻訳 TOPへ

ISEA TOPへ