インドネシア語新聞翻訳
2009年9月24日(木)
【レプブリカ紙】


貧しい人々が殺到するのを見て喜んではならない

【ジャカルタ】

 全国喜捨募集団体(Baznas)のディディン・ハフィドゥディン議長は、裕福な人々に対して、喜捨募集団体を通じて所有物を分与するように要請した。同議長の声明は、月曜日(9月21日)にジャカルタ首都特別州のシティ・ホールで、貧しい人々に生活必需品9品目(訳注1)6千包みを分配する行事で起こった混乱を受けてのものだ。数十人の人々が、踏みつけられて気を失ったのだ。

 同議長は次のように述べた。生活必需品9品目を直接分配した際に起きた出来事により、この方法を続けるのは妥当ではないことを全関係者は教訓とすることができるに違いない。「我々の支援物資を手に入れるために殺到する貧しい人々を見て喜んではいけない」と本紙に対するSMS(訳注2)を通じて同議長は述べた。

 同議長によれば、社会の人々は所有物を分与するために喜捨募集団体を利用するべきだという。「その行動を厳しく管理されている喜捨募集団体やモスクのような、支援物資を分配するために存在する組織をなぜ利用しないのか? 良い企画は良い方法で行なわれるべきだ」

 本紙のドンペット・ドゥアファ(訳注3)のイスマイル・A・サイド代表取締役も同様のことを述べている。同取締役によれば、喜捨もしくは寄付を行いたいなら、専門の喜捨組織あるいは団体を通じて行なうのが最善だという。彼らは貧困地区や対象となる場所を知っており、〔その地区や場所に〕直接に喜捨を行うことができるからだ。

 同代表取締役によれば、このような事件がインドネシアで繰り返されるのは、インドネシア国民には貧しい人々が多いからだという。彼らは直接生活必需品9品目が分配されると知れば、それを手に入れるために競い合う。後に押し合いや殺到が起こるのも珍しいことではない。

 しかし同代表取締役によれば、支援物資となっている包みが喜捨募集団体や組織に直接渡されれば、そのまま貧困地区に分配することができるという。「貧しい人々の家までドア・トゥ・ドアも可能だ。だから喜捨〔したいもの〕があれば、そのような事件が起こらないよう喜捨募集団体などにすぐに処理してもらうべきだ」

 しかし、同代表取締役は次のようにも述べた。そのような事件には学ぶべき教訓がある。少なくともジャカルタ首都特別州のファウジ・ボウォ知事は、ジャカルタにはいまだに大勢の貧困者がいることを知った。

 一方、インドネシア大学の社会学者であるイマム・B・プラソジョ氏は、生活必需品9品目が分配される際に起こった事件を、博愛精神を見せびらかすエリート族特有の病が起因したものだと見なしている。同氏によれば、彼らは国民の安全を考慮していない。「博愛精神を見せびらかす新しい病だ」

 イマム氏によれば、このような民主主義の時代には、公衆に対して「慈善行為を見せびらかそうとする」症候群があるという。このような見せびらかす行為が行なわれ、公衆を管理する側の質の悪さが示された。同氏はきっぱりと述べた。混乱を制止できなかったことは、公衆を管理する側がよくない、ということを示している。

 同氏によれば、エリート族は一般の人々の安全を優先しないという。彼らはエリート集団すなわち国の高官を優先しているだけだ。同様に災害問題の対応においても、政府は〔国民の安全を〕優先しない。直接現金支給(略称BLT)のケースでもモラルの失墜が起こると同氏は見なしている。

 同氏によれば、この〔モラルの〕失墜は、国民とエリート族の双方にふりかかっている。「物乞いをする人の列に並ぶことを恥じない国民は多数いる。これこそが生活必需品9品目あるいは無料の寄付が分配される際の殺到の原因だ。これは国民の間に起こったモラルの失墜だ」

 一方、同氏によれば、エリート族のモラルの失墜は博愛精神の見せびらかしだという。そのため、システムを構築するために強い関心を持つべきだ。貧しい人々を支援したいのならば、下層部つまり隣組(略称RT、訳注4)レベルからなる活動支援組織の成長を支持するべきだ。

 同氏は次のようにも述べた。活動支援組織は様々な事柄に関心を持つ専門組織であるべきだ。例えば、障害のある人々、夫と離婚もしくは死別した女性、貧しい人々、孤児などの、さらに具体的な〔要素を持つ〕人々を支援するための組織だ。「〔喜捨に〕関心のある人々が寄付を行ないやすくするために、この組織は透明性のある組織であるべきだ」と同氏は述べた。ファウジ・ボウォ知事は、来年はこのようなことが再び起こらないことを期待している。「それから、ルバランの祝い金は〔専門組織〕を通して渡すものであり、直接支給するものではない」と同知事は述べた。

【c09/she記者】

訳注

1) 生活必需品9品目: インドネシア語では略称でスンバコと呼ばれる。一般的に
は米、砂糖、食塩、食用油、肉、ミルク、鶏卵、トウモロコシ、灯油の9品目を指す。
2) SMS: ショート・メッセージ・サービスの略。携帯電話でやり取りされるメッセージのこと。日本の携帯電話メールに似たサービス。
3) ドンペット・ドゥアファ: 「弱者の財布」という意味で、経済的弱者の人間的生活を守る非営利慈善団体
4) 隣組: Rukun Tetanggaの略。これが集まってRW(Rukun Warga)という地域組織を構成する


(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:so0909241kk)

原題:Jangan Gembira Melihat Orang Miskin Berdesakan
http://www.republika.co.id/koran/14/77761/Jangan_Gembira_Melihat_Orang_Miskin_Berdesakan


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