インドネシア語新聞翻訳
2009年6月12日(金)
【レプブリカ紙】


アイデンティティーを求める都市の「スフィ」

 オフィス街、高級ホテル、セミナー室などでは、現在ますます多くの宗教活動が行われている。出席者も会社の管理職たちだ。ラマダーン月にはその激しさはさらに増す。

 ある特定の日には、この会社員たちが黒いふちなし帽(男性の場合)やジルバッブ(訳注1)(女性の場合)を被り、イスラーム服を着用しているのを目にすることも珍しくはない。彼らはもはや違和感なく、イスラーム教徒としてのアイデンティティーを示しているかのようだ。

 そのため、ジャカルタのプラマディナ大学のイスラーム・国家研究センターのM・スビィ・イブラヒム事務局長は、彼らに「現代の新スフィ(訳注2)」(2009年1月25日付レプブリカ紙による)という新しい呼び名をつけた。

だから「スフィ」という用語はもはやイスラーム寄宿塾だけのものではない。当初は村落地域で出現したイスラーム神秘主義は、現在新中流階級が圧倒的に多い都市部の会社員へと浸透している。

 「一般には、彼らは経済的に十分安定している。しかし、精神的に無気力な状態に陥っていることも珍しくない」と同局長は明言した。

 その中流階級者たちは、イスラーム法学、神秘主義、信条などの宗教的な専門用語に今ますます親しんでいる。宗教的義務においても、彼らは謹んで業を行うように努めている。

 ナフダトゥル・ウラマ(訳注3)理事会のサイド・アキル・シラジ議長の見解によると、その都市の中流階級の人々は、真の意味でのアッラーのしもべとしてアイデンティティーを確立するために勉強を重ねるという。

 「宗教を信じる精神はさらに有意義に育まれている。家、近所、社会、会社における日常生活での態度や行動が、精神的な価値によって見直されることが期待される」と同議長は述べた。

 ボゴールのイブヌ・ハルドゥーン大学の講師であるイブダルシャー博士は、その種の精神的な文化は、働く雰囲気をさらに親しみがあり、有益なものとすることも可能だと見ている。「結果として仕事がさらに効率よく、恵みあるものとなる」

スローガンではない

 この状況や雰囲気は、ひとりの会社員と他の会社員、上司との仲をもさらに親密にする。そこではイスラーム的価値が存在するため、彼らは互いに尊敬し合う。

 (インドネシア企業)EASCOの傘下においてシャリア(訳注4)保険、教育、銀行、石油天然ガスにいたる様々な分野で活動する企業家である、エミル・アッバス氏もこうした見方をしている。宗教的義務のエッセンスである連帯感は会社経営のアクセントにもなる。

 宗教的な活動は、それ以外に行動におけるシャリアの諸価値を国際化しようとする役割も持つ。「スローガンを口で唱えることだけでなく、宗教その他の活動を通じてもそれは応用される」とし、シャリア・ムバラカー保険会社のサリム・アル・バクリィ代表取締役は次のように説明した。

 この活動の目的は、特に会社員たちの「働くことは宗教的義務の一部分だ」という精神を高めることだ。「そのように宣誓したならば、我々は誠意を尽くし、力をあわせて活動することを基盤として、賢明に、精を出して働く以外にない」

 このことこそ常に会社経営のアクセントになることが望ましい。宗教的義務を行う時だけではなく、様々な活動において力をあわせることは素晴らしい相乗効果をもたらす。イスラームはそれを教えている。会社の「仕事」の一部ともなっている夜明け後の共同礼拝と朝のお祈りは、事業経営においてもさらに宗教的な文化がもたらされるように、大切に見守られるべきだ。
【dam/yus記者】

訳注
1) ジルバッブ: 女性のイスラーム教徒が、人目に触れてはならないとされる頭髪や首、耳を覆うためにかぶるヴェール
2) スフィ: イスラム教神秘主義(スフィズム)の修行者。一般的には個我を滅却してアッラーとの合一を追求し、清貧行を主とした様々な修行に励む人々を指す。
3) ナフダトゥル・ウラマ: 伝統主義的イスラーム組織
4) シャリア: イスラーム法


(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:so0906121kk)

原題: 'Sufi' Perkotaan Mencari Jati Diri
http://www.republika.co.id/koran/52/55857/Sufi_Perkotaan_Mencari_Jati_Diri



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