インドネシア語新聞翻訳
2009年5月28日(木)
【レプブリカ紙】


インドネシアの信徒間の融和は最良

【テルナテ】
 インドネシアで異なる宗教の信者たちが融和して暮らしていることは、国民生活の継続性にとって非常に価値ある財産だ。マフトゥー・バシュニ宗教大臣は、インドネシアの信徒間の融和は、良好なときも不調なときもあったが、国際社会からは最良との高い評価を得ていると語った。

「それのみならず、インドネシアは信徒たちの融和の実験場として見られている」宗教大臣は5月27日(水)、中央およびテルナテ・北マルク地方の宗教関係の有力者間で行われた多文化ビジョンの発展に関する対話集会の開会式における挨拶でこう述べた。この挨拶は宗教省のアブドゥル・ラフマン・マスド研究センター長によって代読された。

 宗教大臣によると、この国際社会からの評価は、2009年3月4日イタリアのローマで開催された「多様性の中の統一:共存する社会へのインドネシア・モデル」というテーマの国際セミナーの中でなされたもので、イタリアのフランコ・フラッティニ外相およびサン・エギディオ共同体(訳注1)の創設者アンドレア・リッカルディ氏が、インドネシアの信徒たちの融和を全世界で最良のものと評価した。

 しかし、マフトゥー大臣は、この賞賛の言葉によって当事者たちが気を緩めることがあってはならないと警告した。「それとは逆に、われわれは常に自らを省みるようにしなければならない。なぜなら、信徒たちの融和は動的なものであり、支持者たちの行動によって変わることもありうるからだ」と述べた。

 各宗教の約30人の代表者が3日間北マルク州を訪れ、テルナテとハルマヘラの宗教を異にする人物たちとの多文化ビジョンの発展に関する対話集会に参加した。この集会には、ムハマディア(訳注2)中央役員会議長のグッドウィル・ズビール氏、ナフダトゥル・ウラマ(訳注3)のリドワン・ルビス氏、バリ・ヒンドゥー最高評議会のイ・ヌンガー・ダナ氏、インドネシア・司教協議会のベニ・スサティオ氏、インドネシア教会連盟のクマラ・スティアブラタ牧師、インドネシア・ウラマ評議会(訳注4)のスラメット・エフェンディ・ユスフ氏、インドネシア仏教徒連盟のスディト・クスモ氏、およびインドネシア儒教最高会議のヘルリアンティ・ウィダグド氏など宗教界の重鎮が参加した。

 宗教大臣によると、今日インドネシアにはさまざまな宗教(訳注5)の信者がいるが、「われわれは民族統一の精神の下、平和的に隣り合って生きてゆくことでその違いを受け入れている」と述べた。

 しかし、違いを受け入れても、その違いの真の意味と本質に関する深い理解が伴わなければ、それは個人および集団の本来的な利害や自己中心主義の誘惑に対して抵抗力がない。宗教的な感情やシンボルが、導火線あるいは引き金として使われると、平和のかく乱は容易に広がると同大臣は述べた。

 ムハマディアのグッドウィル・ズビール氏は、インドネシアの歴史を通じて地域紛争が宗教問題に端を発したことはないと述べた。「例えば、ポソ、アチェ、サンピット、及びマルクのケースは宗教紛争ではない。利害の紛争が後に宗教的な衣を着せられたのだ。」と断言した。

 同氏によると、中央と地方の宗教人の対話を実施した目的の一つは、北マルク地方に見られる地方の知恵(訳注6)を拝借するためだ。「われわれはこのような対話を他の地方でも行っている。この北マルクにある地方的な知恵は他の地方にも応用することができる。その逆も同様だ」と述べた。

 同じ席上で、北マルク州のアブドゥル・ガニ・カスバ副知事は、マルクおよび北マルクで何年か前に起きた紛争の引き金が何であったかは未だ不明だと述べた。彼によると土地の人々ですら、この流血の紛争のきっかけを全く知らないという。

「明らかなことは、われわれは皆この事件を忘れようとしていることだ。現在われわれは団結し、互いに相手を尊重して平和的に暮らしている」と同副知事は述べた。


訳注
1) サン・エギディオ共同体: 1968年当時高校生だったアンドレア・リッカルディの発案で生まれた。キリストの福音の言葉を伝えることを使命とし、貧しい人たちへの支援活動を行っている。同時に異なる文化や民族の人々との友情を育てることをも目標としており、現在この活動は30ヶ国以上に広がっているという。
2) ムハマディア: 改革派イスラーム団体
3) ナフダトゥル・ウラマ: 伝統主義的イスラーム組織
4) インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
5) さまざまな宗教: 現在インドネシアで宗教として認められているのはイスラーム教、カトリック、プロテスタント、ヒンドゥー教、仏教、および儒教である
6) マルク地方の知恵: マルク地方には古来プラ・ガンドンと呼ばれる部族・宗教の違いを越えた親善組織があり紛争の抑止要因とし機能していた



(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so0905281hy)

原題:Terbaik, Kerukunan Beragama di Indonesia
http://www.republika.co.id/koran/14/52863/Terbaik_Kerukunan_Beragama_di_Indonesdia



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