インドネシア語新聞翻訳
2009年1月23日(金)
【レプブリカ紙】


ジルバッブ着用を制限、2病院が法に違反

【ブカシ】
 西ジャワ州のブカシ・ミトラ・クルアルガ病院と東ジャカルタ市ジャティヌガラのミトラ・インターナショナル病院は、女性職員がジルバッブ(訳注1)を着用するのを妨げている。国家人権委員会は従業員がジルバッブを着用することを禁止したり妨げたりすることは、重い制裁に値する差別行為であるとみなしている。

 ミトラ・クルアルガ病院グループは、ジルバッブを着用した女性イスラーム教徒の全職員と女性医師を対象に、長袖の制服を着用することを禁じた決定書012A/SK//DivRSMK/XII-2008を出した。これはこの2つの病院でジルバッブを着用している女性職員にとって、非常に負担の大きい決定であるとみなされている。長袖の着用禁止は、ジルバッブに敬意を払わないことと同意義であるからだ。

 国家人権委員会のイフダル・カシム議長は、このような企業方針は差別行為にあたると見なしている。女性イスラーム教徒がジルバッブを着用するのを禁止したり妨げたりすることは、信仰の自由に関する1999年法律39号および人種差別の撤廃に関する2008年法律40号に反すると彼は述べている。

 「それは1999年法律39号に違反している。この法律に違反する者は15年の刑期ないし15億ルピア(約1250万円)の罰金に相当する刑事事件容疑者になり得る」とイフダル議長は22日(木)本紙に語った。同氏によれば、この法律にうたわれている信仰の自由とは、とりわけ個人の信仰を公に表明することの自由である。

 女性イスラーム教徒がジルバッブを着用することは、信仰の表明の自由の一つの表れだ。イフダル議長は、すべての国民は公の秩序を乱さない限り、自分の信仰心を表明することの自由を有すると明言した。同氏は2008年法律第40号に「宗教」という言葉は使われていないが、「宗教」は「エスニック集団」という言葉の範疇の中に入ると解釈することができると述べている。

 「それは、インドネシアの場合、宗教グループはエスニック集団に基づいて形成される傾向があるからだ」と打ち明けた。同氏よると、ヨーロッパを含めすべての国が、すでにかなり前に信仰の表明の禁止を撤廃している。一例として、当初ジルバッブを禁じていたフランスも今はすでに許容していると述べた。「まだ信仰の自由を保障することができない国は遅れている証拠だ」

 国家人権委員会は、ジルバッブ禁止の動きが起こり続けていることに対して、政府はもっと積極的な姿勢を示すべきだと要求している。「国は国民が自分の信仰を実践することに対して便宜を図り、その実践を容易にする義務がある」とイフダル議長は述べた。同氏によると法務・人権大臣はこのようなケースに対して態度を決める必要がある。「病院に実際上問題があるならば、所轄は厚生大臣だろう。しかし、この問題で職責上まず行動をとるべきなのは法務・人権大臣だ」と同氏は述べた。

 ミトラ・クルアルガ病院グループが定めている規則の中には、女性の一般医および専門医に対し短袖シャツと短袖ブラウス着用の義務づけが明記されている。医療サービス部門で働く女性職員は、公務員の制服のように、マンセット(訳注2)なしで短袖のブラウスを着用すべきとなっている。

 この規則はジルバッブ着用を希望する女性イスラーム教徒を含め、全女性職員に適用されることになっている。ブカシのミトラ・クルアルガ病院の経営者側は全女性職員に、この規則に従う旨の宣誓書にサインをするよう命じている。この宣誓書には、これら規則の全てに従わない場合には無条件で退職せねばならないとの規則も盛り込まれている。

 ミトラ・クルアルガ病院の女性職員の一人は、この規則を受け入れられないと打ち明けている。匿名希望のこの女性従業員は、短袖の上着でジルバッブを着用することは不可能だと語った。ブカシ町地方議会のD委員会議長であるハリ・コスワラ氏は、今年1月から発効したこの差別的な決定に激怒している。「ミトラ・クルアルガ病院はすでにブカシのイスラーム教徒の大部分を軽んじている」と彼は吐き出した。彼はミトラ・クルアルガ病院の経営陣を再度呼び寄せると約束した。「彼らはこちらに来て議会に説明すべきだ」

 一方、この決定書にサインしたミトラ・クルアルガ病院グループの副理事長、フランティニタ・ナティ氏は、本紙の接触に対してノーコメントを通した。ブカシのミトラ・クルアルガ病院の人事労務管理部門役員であるE.セチョデウィ氏も同じく沈黙を通した。


訳注
1) ジルバッブ: 一般的には、女性のイスラーム教徒が、人目に触れてはならないとされる頭髪や首、耳を覆うためにかぶるヴェールを示すが、さらに顔、手のひら以外の身体の全てを覆い隠す衣装のことを指すという見方もある。ヴェール着用者は、一般的に長袖・長い丈のスカート、ズボンを日常的に着用する。本記事が長袖着用禁止を批判している論点もそこにある。
2) マンセット: 手首から上腕部までを覆う腕カバー。日常的にジルバッブを着用している女性のイスラーム教徒が、半袖の服を着る際に腕を見せないために用いるもの。


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so0901231hy)

原題:Batasi Jilbab, Dua RS Langgar Hukum
http://www.republika.co.id/koran/14/27604.html



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