インドネシア語新聞翻訳
2008年12月7日(日)


供犠

 アレックス・サムスリ氏は、供犠用(訳注1)のヤギを毎年自分で探している。また彼に供犠用のお金を送ってきている郊外に住む弟たちのためのヤギも探している。

 「私は常に自分でヤギを買って、それをモスクの(犠牲祭の)供犠委員会に引き渡すことにしている。屠殺費用として通常約5万ルピア(約450円)を添えるだけだ」とジョグジャカルタ特別州の広報部長であるアレックス氏は語った。

 アレックス氏は、供犠用のヤギを通常イモギリ市場でいつも決まった商人から買う。「買うのはジャワ産の黒毛のヤギで、それは見たところ他のヤギよりがっちりしているし肉も多いからだ。貧相なヤギは買わない」とアレックス氏は選び方について語った。

 アレックス氏は自分でヤギを選んでモスクへ届けるが、彼の家族はそのヤギの屠殺現場を見るわけではない。なぜならその供犠用のヤギは、弟たちの分も含めていつも家の近くのモスクに任せるとは限らないからだ。

 アレックス家とは違って、バンドゥン市の故エンディ・アンディアパラジャ氏の家族ではいつも供犠用動物の屠殺の作業に参加している。「私たちは供犠用のヤギを殺し、処理をするのを見届け、分配作業に参加しています」と故エンディ氏の妻であるシャファリダーさん(60歳)は述べた。

 このシャファリダーさんの家族は、親族内での講を利用して供犠を行っている。講には8人が参加しており、1人が1ヶ月に2万5千ルピア(約2千円)を出資する。毎年240万ルピア(2万円強)が集まり、2人がそれを獲得する。もしそれよりも高い値段のヤギを買いたいのであれば、あとは自分の金を足せばよい。

 すでに予算が分かっているので、その範囲で一番いいヤギが選ばれている。モスクの近くにはヤギの飼育場がある。「私たちはヤギを選んで、モスクの世話人に犠牲祭の日までその世話を頼むだけです。世話人が牧草を探して餌を与えたりしてくれるのです」とシャファリダーさんは語った。

 フェアリーさん(30歳)は、地元のバンドゥン市ウジュン・ブルンで供犠用の動物を扱っているアヌール財団に供犠を全面的に任せている。会社勤めの身でヤギを探す時間を持てないこと、ましてその肉の分配に参加することなど不可能だとフェアリーさんは述べている。「財団で買えば、あとはお金を払うだけで、その後は出した金額に応じて財団がヤギを選んでくれる。」とフェアリーさんは述べた。

 ヤギは犠牲祭の1週間前に購入されるが、財団が屠殺の日までそのヤギの世話をしてくれるのでフェアリーさんは煩わしい思いをする必要がない。それに通常、財団のヤギは飼育状態が良く、売られる前に健康チェックを済ませるので病気に罹っておらず供犠にふさわしい旨の証明書がある。「お金を払っておけば、犠牲祭の日に私はヤギが家に運ばれてくるのを待っているだけで、面倒なことはない」とフェアリーさんは語った。

 犠牲祭での集団礼拝が終わってからはじまる屠殺は、待ちに待ったときである。供犠委員会が供犠用の動物が屠殺される際、供犠提供者の名前を呼ぶ。

 シャファリダー家は通常全員が立ち会うことにしている。ヤギは沐浴を済ませ、匂わないように、香水をかけられる。飲み物と腹一杯の食べ物を与えられる。「屠殺される前に甘やかしてあげることが肝心です」そして屠殺が終わると家族は肉を切り分けて包み、それを恵まれない家族に分配するのだとモスクでの供犠委員会委員としての活動もしているシャファリダーさんは述べた。

 ドンペット・ドゥアファ(DD、注2)の供犠動物配布(THK)プログラムを通じて供犠する場合は、供犠用動物の屠殺現場に立会うことができないが、スージー・ニルワナさんはそれでもTHK DDに託する気持ちに変わりはなかった。彼女は今回、長男ファイサルの名で供犠をささげるが、いつも通りTHK DDに託した。

 「もし、首を切るのを見たいのであれば、学校で毎年必ず供犠を行っている。子供たちは通常それを見て教師から説明を受けている」とそのブカシの住民は述べた。

 スージーさんによれば、THK DD を通じた供犠には利点があるという。「自分で買い、首を切り、貧しい人々に分ける煩わしさがない。インドネシアのDD を通じれば銀行から送金して振り込み証明書を送り、供犠の場所を決めればそれですべてが完了だ」とスージーさんは述べた。


訳注)
1) 供犠: この記事では犠牲祭でのものを意味している。メッカ巡礼の終わりを祝う祭りで動物を犠牲にし、その肉は貧者に分け与えられる。インドネシアでは山羊が犠牲にされることが多い。イスラーム暦の12月10日にあたる。
2) ドンペット・ドゥアファ: 「弱者の財布」という意味で、経済的弱者の人間的生活を守る非営利慈善団体


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so0812071hy)

原題:Berkurban
http://www.republika.co.id/koran/14/18834.html



ISEA インドネシア語新聞翻訳 TOPへ

ISEA TOPへ