2007年11月29日(木)

ジャカルタの視覚障害者にもっと点字訳コーランを

 サプト・ワルヨ氏(26歳)がコーランの各章を読誦する声が、11月27日(火)南ジャカルタのルバク・ブルス特殊学校の講堂に響き渡った。ジャカルタのシャリフ・ヒダヤトゥラー国立イスラーム大学イスラーム神学部4年のこの学生には、五感の障害によって神の言葉を学ぶ意欲をくじかれることが全くなかった。

 彼は正確な発音でのコーランの読誦をよく理解しており、それが読誦するときの美しくはっきりした彼の声を完璧なものにしていた。多くの記者やマンディリ銀行の喜捨組織(BP ZIS)の職員は、点字訳コーランをひと文字ずつ非常に美しくはっきりと読むサプト・ワルヨ氏の黄金の声に感動した。「障害のある彼がこのように美しく読むことができるのだ。五感満足な私たちは一体どうだろうか」と感動した一人の記者がきっぱりと言った。

 ジャカルタのインドネシア視覚障害者協会(Pertuni)会長、バユ・イワン・ユリアント氏によると、点字訳コーランを必要としている視覚障害者は現在少なくはない。「ジャカルタの当協会に登録されている視覚障害者の数は、2003年の時点で4,000人以上だった。その一方で点字訳コーランの数はわずか500セットしかない」と彼は本紙に語った。

 ジャカルタPertuniの副会長ヨギ・マドゥスニ氏の記録では、現在ジャカルタには7,000人を下らない数の視覚障害者がいる。「個人や団体が所有している点字訳コーランは、わずか500セットで、点字訳コーランの需要はまだ非常に大きい。マンディリ銀行の喜捨組織(BP ZIS)が行っているような支援を私たちは必要としている」とヨギ氏は期待を込めて語った。

 バユ氏もヨギ氏もジャカルタにおける点字訳コーランの需要は、まだ非常に大きいと見ている。「これまでのところ、点字訳コーランの値段は、印刷やその他の理由でかなり高いと言わざるをえない。80万ルピア(約1万円)から120万ルピア(約1万5千円)の値段がついており、中には150万ルピア(約1万9千円)するものもある。私たち視覚障害者にとって高すぎる」とバユ氏。

 マンディリ銀行BP ZISの役員、タウフィック・ヒダヤット氏は、BP ZISは視覚障害者たちが点字訳コーランをより深く学ぶ手助けすることに関わっていると説明した。この組織が点字訳コーランの提供を支援することで、視覚障害者と関わりはじめたのは2年前だった。そのとき彼らは、タンゲランのチポンドーの視覚障害者協会にユスフ・マンスール師を招いて説教の集いを開き、同時に点字訳コーランの支援を行った。「その時、私たちは2600万ルピア(約32万5千円)の支援金を集め、それを同協会に渡した」とタウフィック氏は語った。

 「今日、提供するのは、点字訳コーラン10セットと点字訳コーランの文字を覚える学習にかかる費用だ。マンディリ銀行BP ZISは、これまでに60セットの点字訳コーランを視覚障害者たちに寄付した」とタウフィック・ヒダヤッタ氏は述べた。タウフィック氏によると、彼らは支援のすべてを点字訳コーランの提供に当てるのではなく、点字訳コーランの文字の学習にも向けている。「普通の人でもコーランを読むのは難しいが、点字で読むことはさらに難しい。コーランを読めない視覚障害者が、点字訳のコーランを読めるように彼らに学習機会を与えなければならない。それにはさまざまな団体からの働きかけが必要だ」

 通常のコーランと点字訳コーランの顕著な違いは、その大きさだ。通常のコーランでは全30巻(注1)が1冊分の厚さであり、大きさもそれほどのものでない。しかも最近では小型化されたものも多く、より使いやすくなっている。一方、点字訳コーランは小型化ができず、各巻毎に1冊になっている。「つまり30巻で30冊になる。そのため、点字訳コーランの値段は、通常のコーランの値段よりもずっと高くなっている」とバユ氏は述べた。

 マンディリ銀行のBP ZISのような組織からの支援は、これまでのところまだそれほど多くないとバユ氏は語る。「そのため、視覚障害者の生活に対して関心を持ってくれているマンディリ銀行のBP ZISに深く感謝している。正直なところ、このように関心を持ってくれる組織は非常に稀だ。以前、宗教省から27セットを受け取ったことがあり、それはジャカルタのさまざまな地区の視覚障害者たちに分けた」

 バユ氏はまた、個人あるいは団体からの寄付された点字訳コーランが配布されてからも、首都の視覚障害者たちの障害となっていることがあると述べた。それは点字訳コーランの文字の識字率を改善することで、コーランの提供に劣らず重要なことである。

【ダマンフリ・ズフリ記者】



注1) 全30巻: コーランは114章から成っているが、その章とはべつに読誦するときに一度に読む目安となる分量を基準として全体を30に分割している。その分割された一つのことで、原文ではjuz(ジュズ)となっているがここでは「巻」とした。



(翻訳者:山本肇)
(記事ID:so0711291hy)

原題:Tunanetra Jakarta Butuh Alquran Braile
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=315451&kat_id=286



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