インドネシア語新聞翻訳
2010年4月9日(金)
【レプブリカ紙】


イスラームは汚職を非難し、戦う

 汚職事件のスキャンダルは祖国インドネシアに蔓延し続けている。毎日、印刷・電子マスメディアは汚職のニュースを休むことなく報道している。汚職事件のそれぞれに国家の高官、裁判官、検事、国税総局、警察および弁護士が関与していることが明らかにされた。裁判にかけられた汚職犯罪者もいたが、この世界最大のイスラーム教徒人口を有する国で、汚職の慣習は依然として起こっている。

 イスラームの教義は、汚職(ghulul)と賄賂(risyawah)の慣習はハラム(訳注1)であることをはっきりと明示している。特にインドネシアのウラマ(訳注2)たちは高官に対する賄賂、汚職、贈り物に関するファトワ(訳注3)を決定した。2000年に開催された第6回全国会議で、高官に対する汚職、賄賂、贈り物の法的状況に関する信者の疑問に答えるために、インドネシア・ウラマ評議会(訳注4)によってそのファトワは決定された。

 インドネシア・ウラマ評議会のフォーラムに参加したインドネシアのウラマたちは、賄賂の授受はハラムであることに合意した。「汚職を行うことは法的にハラムだ」とウマル・シハブ師はそのファトワの中で述べている。それでは高官に贈り物をすることはどうだろうか?

 インドネシア・ウラマ評議会は高官に対する贈り物についてのいくつかの判断基準を決定した。まず第一に、高官が職に就く前に与えられた贈り物については、その種の供与は法的にハラル(ハラムでない、訳注5)で、受け取ることも同様にハラルだ。

 第二に、贈り物の供与者と高官の間に何の関わりもない場合には、その贈り物の授受はハラムではない。

 第三に、贈り物の供与者と高官の間に何らかの関わり又は利害関係が見出される場合は、その贈り物を受け取ることは高官にとってハラムであり、何らかの便宜を図る目的で贈り物を供与することも供与者にとってハラムだ。

 第四に、贈り物を供与する前後どちらにおいても、供与者と高官に間に何らかの関わりがある場合で利益誘導の目的がない場合には、その贈り物の供与者にとってそれは全くハラルだが、高官がそれを受け取ることはハラムだ。「全ての階層の人々は、そのような慣習に関与せずに〔汚職を〕撲滅する義務がある」ウラマたちはそのように呼びかけた。

 ムハマディア中央指導部のイスラーム法・改革委員会も、賄賂は法的にハラムであることを明らかにしている。そのことは、〔次のような〕コーラン雄牛の章 188 節に基づいている。「あなた〔と他人〕の間で他人の財産の(一部)を不法な方法で貪ってはならない。その他人の財産の一部を貪るために、罪であると知りながらその財産(用件)を裁判官のところに持って行ってはならない」

 ムハマディア中央指導部はそのファトワの中で、賄賂の授受はハラムとされている行為に含まれることを明らかにしている。そのことは次のような預言者ムハンマドの言葉に合致している。「アブ・フライラー(訳注6)の伝承によれば、預言者ムハンマドは『アッラーは物事の決定に賄賂を授受する者を呪った』と語っている」(アーマッド《訳注7》が伝えるハディース《訳注8》より)

 賄賂が法的にハラムであることは、イブヌ・アムル(訳注9)から伝え聞いたアト・タブラニが伝えている他の2つのハディースによっても明言されている。「賄賂の授受を行う者は地獄に落ちる」「アッラーの神は賄賂を行う者、賄賂を受け取る者や両者の間に関わる者を呪う」

 著名なウラマであるユスフ・アル・カラダウィ師も「現代のファトワ」の中で、イスラーム教徒が誤りを犯した者を解放するために賄賂を行うことを禁じている。賄賂の授受の慣習がひきおこすダメージがいかに大きいかを同師は想起している。「賄賂の授受は既存のシステムに影響を与えるだろう。この慣習によってあらゆることがそれなしでは不十分なものとなる」と同師は述べた。

 ナフダトゥル・ウラマ(訳注10)のウラマたちも、賄賂を行う者の刑罰に関するファトワを決定した。2002年に行われたナフダトゥル・ウラマの宗教学者全国会議では、イスラーム法に基づき、汚職は国民のメッセージに対する重大な裏切りであることが決定された。

 ナフダトゥル・ウラマのウラマは、汚職の進め方やそれによって引き起こされる影響を見ることで、汚職は窃盗(sariqah)や強盗(nahb)に分類されうることに合意した。「本来ならば汚職は重大な罪に含まれる」そのファトワの内容はそのようなものだ。

 それでは汚職で授受された金銭を返還した場合には刑罰を中止することができるのだろうか? ナフダトゥル・ウラマのウラマは、汚職で授受された金銭を返還しても刑罰は中止されないことに合意した。刑罰の要求はアッラーの権利であるが、汚職に関わった金銭を国に返還することは社会の人々の権利だからだ。そのファトワの中で、ナフダトゥル・ウラマのウラマたちは、汚職を行う者に相応しい刑罰は、手の切断から死刑まであることも明らかにしている。

 現在、大物の汚職犯罪者の死刑に関する講演が繰り広げられている。多くの人々が、国民に多大な金銭の損害を与えた汚職犯罪者に対する死刑の適用を支持している。そういった講演は、汚職撲滅委員会(以下KPK)からもポジティブな反響を得ている。

 KPKのハルヨノ・ウマル副議長は、汚職犯罪者たちに対する死刑適用を支持していることを明言した。「確かに法律があるならば、後は実行するだけだ。つまり、それは理解できることだ」水曜日(7月4日)に報道陣に対して同副議長は述べた。汚職犯罪者に対する死刑の規定は、刑法違反行為である汚職撲滅に関する1999年法律第31号で実際に言及されている。
【Heri Ruslan, Indah Wulandari記者】


訳注
1) ハラム: イスラーム法によって禁止されている行為、摂取物
2) ウラマ: イスラーム教の宗教指導者、法学者
3) ファトワ: イスラーム法に基づく宗教学者の見解
4) インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
5) ハラル: イスラーム法によって許容されている行為、摂取物
6) アブ・フライラー: ムハンマドの教友の一人
7) アーマッド: イスラーム学者(イスラーム暦164-241)
8) ハディース: 預言者ムハンマドの言行録
9) イブヌ・アムル: ムハンマドの教友の一人
10) ナフダトゥル・ウラマ: インドネシアの伝統主義的イスラーム組織

(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:po1004092kk)

原題:Islam Kecam dan Perangi Korupsi
http://koran.republika.co.id/koran/52/108214/Islam_Kecam_dan_Perangi_Korupsi



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