インドネシア語新聞翻訳
2010年3月12日(金)
【デティック紙】


ユドヨノ、センチュリー銀行スキャンダル、そしてテロ

【ジャカルタ】
 〔3月9日に起きた〕対テロ特殊部隊88分遣隊の手によるテロリストの首領ドゥルマティン(訳注1)の射殺は、たしかに誇るべき金星ではある。ましてやインドネシアが経済、法の確立、汚職の問題で深みに沈んでいる中での成果だ。それなのに、なぜこの快挙が一部の人たちに皮肉な眼で見られているのか?

 皮肉な人たちは、テロ撲滅とユドヨノ大統領、センチュリー銀行問題(訳注2)の間には相互関係、言い換えれば政治的操作があると見ている。そう思ってみると確かにこの三者には互いに関連がある。ユドヨノは大統領としてセンチュリー銀行問題を含め、彼がとった全ての政策に対して責任を負っている。ユドヨノ大統領もそれを認めている。

 テロ事件に関してユドヨノ大統領は常日頃から、インドネシアを国民に不安を抱かせるテロ活動のない国にすると誓っている。そればかりか2009年7月19日のホテル・リッツ・カールトンおよびJW. マリオット・ホテルの爆破事件が起きたあとには、テロリズムに対する戦争を布告するために、大統領宮殿で特別に記者会見すら開いている。

 二期目のユドヨノ政権にとってインドネシア警察の快挙は、射殺という事態になったにせよ、テロリストを捕らえたということでは確かに賞賛に値する。ヌルディン・トップ(訳注3)やドゥルマティンのようなテロリストの首領クラスを潰すことができたのだ。しかし、なぜ殺さなければならなかったのか? 警察はテロリストによる反撃から身を護るために殺さざるをえなかったのだと言い訳をしている。

 しかし、外野ではさまざまな噂が飛び交っている。最近あったばかりのテロリスト撲滅という成功ストーリー(ドゥルマティンの逮捕)の裏には、政治的操作があったと非難する者がいる。ドゥルマティンを射殺してまで逮捕したのは、もっぱら問題を逸らすために過ぎないと非難する者がいるのだ。彼らは、ユドヨノ大統領は彼の政権内で起きた問題を隠すために、いつもテロリスト逮捕劇といった話題を次から次へと作っていると非難している。

 陰謀という眼鏡でみると、この非難は実際のところ当たっていないことはない。ご承知のように、このドゥルマティン逮捕は政治状況が熱くなっているときに起きた。センチュリー銀行の救済に問題があったことを明らかにした特別委員会の報告が国会の総会で承認されたばかりだ。ブディオノ副大統領とスリ・ムルヤニ財務大臣は責任を取るべきと考えられており、解任風も強く吹いている。

 テロリズムという新しい問題、特にアチェとパムランにおけるテロリストの逮捕で、センチュリー銀行問題に関する国会の議決にどう対処してゆくかという政治問題は、この「大きな」事件で直ちに蓋をされるだろう。そのうえ、ドゥルマティンのような大物テロリストの逮捕の他に射殺された者もいた。センチュリー銀行問題がしばしお休みとなるのは確かだ。

 ひとびとはセンチュリー問題から眼を逸らすようにされているのだ。ユドヨノ大統領が、パムランで射殺されたテロリストの一人がドゥルマティンだと公表したとき、こういう非難が起きたのはいたしかたないと私は思う。ましてやオーストラリアの議員たちを前にした挨拶の中で行われたこの発表で、大統領は拍手喝采を受けたのだ。もっとも、インドネシアの多くの人は、ユドヨノ大統領が警察から報告を受けたとき、オーストラリアの議員と国民の前であったにせよ、パムランで逮捕されたテロリストを直ちに公表したことを歓迎しているのだが。

 しかし、ドゥルマティンが米国の情報局から一千万ドルの懸賞がかけられ、米国、オーストラリア、シンガポール、フィリッピンの4ヶ国、そして当然インドネシア自身からも指名手配されているテロリストの首領であることを考えると、この一部の人たちの賞賛が、オーストラリアにおける大統領殿の行動を見てますます大きくなったひとびとの疑いの念を消すことにはならない。

 ひとびとはなぜ大統領がインドネシアの当局の公表前に外国で発表したのか疑問に思っている。政治情報評論家のチプタ・ルスマナ氏もこのユドヨノ大統領の態度は、死んだのは本当は誰なのか確報を待っているインドネシア国民を馬鹿にするものだと非難している。なぜユドヨノ大統領は、オーストラリアのケビン・ラッド首相および議員たちの前で「報告」するようなことをしたのか? テロリストに対する戦争の費用の一部があの国から出ているからなのか?

 そして、ユドヨノ大統領と彼の政権の権威を揺るがす大きな政治問題のさなかに行われたテロリスト逮捕のさまざまな試みは、一部の人が疑っているように、意図的に行われたのだという非難は正しいのか? 私はこのテロの公表はたまたま大きな問題があることと重なったのだと信じている。私が間違っていなければいいのだが。 【ムハマド・ヌル・ハイド、筆者はデティックコムの記者。この記事は個人的な意見であり筆者が働いている会社の意見を代表するものではない】


訳注
1) ドゥルマディン: 2002年バリ島での爆破事件の主犯として指名手配されていた。この事件では202人の犠牲者を出したが、そのうち88人がオーストラリア人であった。
2) センチュリー銀行の問題: 経営危機に陥ったセンチュリー銀行(現ムティアラ銀行)に2008年11月、約6兆7千億ルピア(約640億円)の公的資金が注入された救済策に違法行為があったとする問題。本文後述のとおり2010年3月3日にインドネシア国会で当時のインドネシア銀行(中央銀行)総裁のブディオノ副大統領やムルヤニ財務相を捜査するよう司法当局に求める報告書が賛成多数で可決されたばかりである。詳細は2010年3月掲載記事「国民議会に敬意を表する」訳注1を参照。
3) ヌルディン・トップ: 上述の2009年7月に起きた外資系2ホテルの爆弾テロの首謀者である、マレーシア国籍のテロリスト。ドゥルマディンと同様、同年9月に対テロ特殊部隊88分遣隊によって射殺された。

(翻訳者:山本肇)
(記事ID:po1003125hy)

原題:SBY, Skandal Century, dan Terorisme
http://www.detiknews.com/read/2010/03/12/092400/1316795/103/sby-skandal-century-dan-terorisme



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