インドネシア語新聞翻訳
2009年11月3日(火)
【メディア・インドネシア紙】


〔汚職撲滅委員会副委員長逮捕に対する〕不信の津波

 チャンドラ・ハムザ氏およびビビット・サマド・リアント氏に対する国民の支持は奔流となっている。この支持は高く巻き上がる津波のようだと言う者もいる。運の悪いことに、支持の津波が大きくなるほどに司法当局のやり方に対する不信の津波もまた大きくなっている。

 これが最近の日々に起きていることだ(訳注1)。汚職撲滅委員会で指導的立場にあるチャンドラ氏とビビット氏の二人(いずれも休職中)は、職権乱用のかどで警察に拘留されているが、国民からはかえって大きな同情が寄せられている。それに対して政府、特に警察と検察に対する国民の信頼は急降下している。これは、本来なら支持者との蜜月を享受しているはずのスシロ・バンバン・ユドヨノ政権にとって、当然大きな打撃だ。

 チャンドラ氏とビビット氏に対しフェイスブックの〔加入者が立ち上げた彼らを支持するグループへの〕参加者はこの3日間ですでに40万人に達しており、今週末には百万人になると予想されているが、警察と検察に対する不信の津波の具体的な現われとなっている。

 チャンドラ氏およびビビット氏が巻き込まれている事件に関し、ユドヨノ大統領およびバンバン・ヘンダルソ・ダヌリ警察庁長官はプレスで説明を行ったが、それも直ちに信頼を得ることにはならなかった。その証拠に、司法の現場には介入しないとユドヨノ大統領が言明し、本件に関し警察庁長官が詳細に説明したにもかかわらず、フェイスブックにおけるチャンドラ氏とビビット氏に対する支持は急増の一途をたどった。両氏を支持する黒リボン運動など、様々な都市でのデモ行動も広がった。

 汚職撲滅委員会を弱体化させるいかなる動きに対しても最前線で立ち向かう、との大統領の説明も、ビビット氏とチャンドラ氏に対する支持の流れを沈静化させることができなかったため、この事件のための独立した真相究明チームを発足させざるをえなかった。

 しかし、この独立したチームは、まだ活動を始める前から、人々から疑問視されている。というのはチームの中にユドヨノ大統領に近い人たちがいるからだ。例を挙げれば、法律分野における大統領特別スタッフになったデニー・インドラヤナ氏、民主党の幹部であるアミール・シャムスディン氏などだ。

 それでは、なぜ政府、特に司法当局に対する国民の不信が最近津波のように激しくなったのか?

 第一に、司法当局がもっぱら手続きの問題だけを重視しているのに対し、国民はビビット・チャンドラ事件の不公平感を問題にしていることだ。手続きさえ完全であればよしとする司法当局の考えは、真実と正義を求める人々の良心や良識とはかけはなれていた。

 第二には、現在犯罪者扱いされている汚職撲滅委員会が、警察や検察組織よりもずっとましだと国民から見なされている組織であることだ。

 流出した録音(訳注2)に対しても警察は誰が録音し、それを流出させたかだけにこだわっており、この録音の中で述べられている人物たちに対する徹底した捜査は行っていない。

非常に悪いイメージのインドネシアの司法当局

 国民の信頼を獲得するべくイメージを回復させるには、大変な努力が必要とされる。これまで警察も検察も、法を確立する行動において改革が見られていない。そのため汚職撲滅委員会の、実際には当たり前の行動が、立派な実績として国民から賞賛されているのだ。

 他の国では、恥ずべきスキャンダルは通常責任ある高官たちが辞任を考えることによって収まっている。


訳注
1) 本記事の背景: 汚職撲滅委員会の副委員長であるチャンドラ氏とビビット氏が職権乱用および収賄の疑いで逮捕されたが、これは汚職撲滅委員会による警察や検察の汚職の摘発が続いたため、汚職撲滅委員会を弱体化させようとして、警察および検察が仕組んだことではないか、と国民は疑っている。この事件は、それぞれ大きな権力を握っている汚職撲滅委員会と警察・検察との軋轢が背景にあると言われている。

2) 録音: 評判の良くない実業家と警察・検察関係者がチャンドラ氏とビビット氏を陥れる相談をしている会話を盗聴・録音したものが存在することが明らかとなった。その会話の中にユドヨノ大統領の名前が出てくるので注目されている。


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:po0911033hy)

原題:Tsunami Ketidakpercayaan
http://anax1a.pressmart.net/mediaindonesia/MI/MI/2009/11/03/ArticleHtmls/03_11_ 2009_001_009.shtml?Mode=0


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