インドネシア語新聞翻訳
2009年5月16日(土)
【メディア・インドネシア紙】


宗教系政党の不振

 2009年の国会議員選挙では非常に顕著な現象が見られた。それは宗教系政党の得票が伸びなかったことだ。この現象は少数派の宗教だけでなく多数派の宗教にも見られた。

 その証拠に、少数派宗教系の政党はパーセントで小数点以下の票しか獲得できず、コンマ以下の政党になった。これはその信者が投票所で自分の宗教系の政党に投票しなかったことを示している。

 多数派宗教系の諸政党はどうだったか? 議席獲得のハードルである2.5%(の得票率)を越えたイスラーム系諸政党も上位を占めることはなかった。つまり、福祉正義党(訳注1)、開発統一党(訳注2)、国民信託党(訳注3)、それに民族覚醒党(訳注4)の4政党合計で、24%の票しか取れなかった。

 それ以外の大多数の票はアバンガン(訳注5)の政党、あるいは民族主義系政党に分類される政党に流れた。それらは民主党(訳注6)、ゴルカル党(訳注7)、闘争民主党(訳注8)、大インドネシア運動党(訳注9)それにハヌラ党(訳注10)で、全体で58%の票を獲得した。

 他の興味深い現象として、宗教系の新党では議席獲得のハードルを越えた政党がひとつもなかったことが挙げられる。逆に、民族主義系の新党では大インドネシア運動党とハヌラ党の二党が議席獲得に成功した。

 この事は、民族主義系政党の得票率が2004年の47.6%から2009年には58%に上昇したという数字からも裏づけされる。それは何を意味しているのだろうか?

 第一に、2004年の総選挙では宗教系の政党に投じたかつての有権者が、今回は民族主義系政党に移ったことを意味している。

 第二に、今回の有権者は宗教系政党よりもアバンガン系の政党を選ぶ傾向にあったことも意味している。

 この二番目の説明は、民族主義系の新党である大インドネシア運動党とハヌラ党の得票が、最も戦闘的なイスラーム政党である福祉正義党が獲得した票の増加分を上廻ったことから裏付けされている。

 しかし、他面において民族主義系政党間でも一方から他方への票の移動が起きている。ゴルカル党と闘争民主党は民主党、大インドネシア運動党、それにハヌラ党に票を奪われている。

 これらのことから、宗教系政党の得票は民族主義系政党の得票に比べて不振だったと言っても過言ではない。

 また、民族主義系政党も彼らの間での票の奪い合いが生じたため、大政党になるのが難しかったことを示したと言ってもよいだろう。

 他に学ぶべき重要なことは、内紛の結果生まれた新党には買い手がつかないということだ。したがって、抗争即新党結成などとは考えないことだ。


訳注
1) 福祉正義党: 都市イスラーム層を基盤とする政党。清潔なイメージで伸びた。
2) 開発統一党: スハルト政権期から続くイスラーム政党
3) 国民信託党: 改革派イスラーム団体ムハマディアを支持基盤とする政党
4) 民族覚醒党: 伝統的イスラーム組織であるナフダトゥル・ウラマを母体とする政党
5) アバンガン: アメリカの人類学者クリフォード・ギアツが提唱した概念で、ヒンドゥー・ジャワ的な要素を強く残したイスラーム教徒を指す。イスラームの戒律をあまり守らず、霊や祖先にたいする崇拝を大事にする。これに対しイスラームの戒律に忠実な敬虔なイスラーム教徒をギアツはサントリと言った。
6) 民主党: 現ユドヨノ大統領を擁する政党
7) ゴルカル党: スハルト政権期の翼賛政党。現在民主党と連立で与党を組む
8) 闘争民主党: 初代大統領スカルノの娘メガワティを党首とする民族主義的政党
9) 大インドネシア運動党: 元戦略予備軍司令官プラボウォ氏を党首とする政党
10) ハヌラ党: 元国軍司令官ウィラント氏を党首とする政党


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:po0905163hy)

原題:Stagnasi Partai Berbasiskan Agama
http://www.mediaindonesia.com/read/2009/05/05/74926/70/13/Stagnasi-Partai-Berbasiskan-Agama



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