2007年9月22日(土)

唯一原則の提案はイスラーム政党に対する恐れ

【ジャカルタ】
 ゴルカル党(PG)(注1)、民主党(PD)(注2)および闘争民主党(PDIP)(注3)がパンチャシラ唯一原則(注4)の提案を望んでいるのは、イスラーム政党に対する彼らの恐れの現れだ。9月21日(金)ジャカルタの国民議会記者室で行われた「パンチャシラ唯一原則に関する言説」と題する討論の中で、政治評論家ファーリ・アリ氏はこのように発言した。

 「世俗政党に、イスラーム政治勢力に対する恐れがあることは明らかだ。イスラーム政党が民主主義を誠意をもって実行しない、こうした懸念を世俗政党は抱いている」とファーリ・アリ氏は語る。この討論会には、スポークスマンとして国民協議会の副議長AMファトワ氏、闘争民主党会派出身の政党法案特別委員会議長のガンジャル・プラオノ氏、ゴルカル党会派のイドルス・マルハム氏が出席した。

 ファーリ氏は、この現象には不可解なところがあるという。こうした世俗政党は、総選挙でイスラーム政党を勝たせるくらいなら、軍がクーデタを起こすほうを選ぶことが明らかだ。そして民主主義を規制する戦略として、唯一原則を再び実施したいという望みがある。

 一方、ファトワ氏は、政党の基本方針を一本化する試みは、闘争民主党、民主党、およびゴルカル党にとって政治の「売り物」に過ぎないと見ている。「政治の売り物にとどまるならば、まだ良い。しかし、パンチャシラという唯一原則が、スハルト時代のような社会への回帰に向かうなら、それは非常に危険だ」

 ファトワ氏によれば、スハルト時代のパンチャシラという唯一原則は、人々を恐がらせる幽霊のような存在で、支配者にとっては対立する側を押しつぶす武器でもあった。そのため、その時代に多くの人物がパンチャシラに反したとみなされ、投獄されたのも驚きではない。政府と意見を異にした者は、すぐに反パンチャシラの烙印を押された。

 この言明を受けて、ゴルカル会派出身の政党法案特別委員会副議長のイドルス・マルハム氏は、スハルト時代のような唯一原則のモデルには合意しないと述べている。以前の状況では、パンチャシラは政権の利害のために一本化された。ゴルカル党が行う提案は、国民の政治の中での共通の原則としてのパンチャシラである。

 ゴルカル党が政党法案に出す提案は、国民のイデオロギーと党のイデオロギーの中間を選ぶものだ。それは次のような文言になっている:パンチャシラは、国民生活の原則であり、政党を含めた国家のありかたの原則となる共通の綱領である。そして、その次の章には、政党は国民の綱領としてのパンチャシラに反しないイデオロギー(特徴、性格)を持つことと、提案されている。「パンチャシラが政党の共通原則になることで、存在する多様性、特徴や性格が否定されることにはならない」とイドルス氏は説明する。

 ガンジャル・プラノオ氏も、イドルス氏と同じ考えを持っている。この闘争民主党の政治家は、政党の基本方針と政党の基本原則を分けることを提案している。基本原則においては、政党はその特徴やアイデンティティーについて明記することができる。

 これらとは別に、開発統一党(PPP)の議長スルヤダルマ・アリ氏は、イスラームとパンチャシラを対決させる試みがあってはならないと考えている。パンチャシラは、もともとイスラーム的価値の産物なのだから、なおさらだ。

 「この言説が強制されるなら、非常に後退した考えが起こることになる。だからこの問題は、これ以上蒸し返す必要はない。そんなに騒ぎ立てることはない。パンチャシラはイスラーム教徒から贈られたものなのだから、唯一原則の問題はもう片付いている」と同氏は語った。


注1) ゴルカル党: ゴルカルは「職能集団」を意味する語の略称。公務員を基盤とし、政党とは区別されてきたが、スハルト政権時代の実質的な与党。1998年のスハルト政権崩壊後は政党となり、1999年の総選挙では第二党、2004年の総選挙では第一党となった。

注2) 民主党: 当時政治治安調整相であった現ユドヨノ大統領を大統領候補にするため、2002年に結成された政党。

注3) 闘争民主党: スハルト政権時代に存在した2野党のうちの一つ、インドネシア民主党に根ざす政党。1993年にスカルノ元大統領の娘メガワティが党首に就任するが、1996年にその座を追われる。1999年の総選挙の際、メガワティ派が中心となって闘争民主党が結成され、同年の総選挙では第一党となるが、2004年の総選挙では第二党にとどまった。

注4) 唯一原則: スハルト政権時代の1985年の法案成立により、パンチャシラがあらゆる組織の唯一原則として採用された。しかし、同政権崩壊後、唯一原則の義務化はなくなっている。パンチャシラとは、インドネシア共和国の建国5原則(唯一神への信仰、公平で文化的な人道主義、インドネシアの統一、協議と代議制において英知によって導かれる民主主義、インドネシア全人民に対する社会主義)で、代々の政権が国是としてきた。パンチャシラとイスラームについては、2007年5月16日の翻訳記事を参照のこと。


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:po0709222hy)

原題:Asas Tunggal Bentuk Ketakutan akan Partai Islam
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=307924&kat_id=43



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