2007年9月12日(水)

イスラーム政党は挟撃される恐れあり

 2009年の総選挙でぶつかり合うイスラーム諸政党の立場は危機に瀕している。総選挙法の改訂によって、闘争民主党(PDIP)とゴルカル党(PG)の二大政党の勢力が彼らを挟み撃ちにする可能性があるからだ。

 9月11日(火)、国民議会の各会派は、総選挙法案に関するアンケートに提案を記入した。つまり、それぞれの会派が総選挙法改訂に正式に提案を出したことになる。闘争民主党もゴルカル党もすでに提出した。

 「大政党ではないわれわれの仲間たち、すなわち得票数が多くない諸政党(イスラーム政党ないしイスラームのシンボルを使っている政党を指している)は、闘争民主党とゴルカル党の提案に脅威を感じていると私は考える」と総選挙法案特別委員会のジャズリ・ズワイニ氏(福祉正義党会派)は述べている。

 ジャズリ・ズワイニ氏は根拠なくそのようなことを述べたわけではない。ゴルカル党と闘争民主党の基本的な意向は政党の簡素化を行うことで、その意とするところは政党を追い出すことにある。月星党(PBB)、改革の星党(PBR)、それに民族民主統一党(PPDK)も国会での存在が困難になる。

 それだけでなく、国民信託党(PAN)、民族覚醒党(PKB)、福祉正義党(PKS)、それに開発統一党(PPP)の立場までも安全ではない。もし剰余票方式(訳注1)による議席獲得決定が廃止されれば国会での彼らの議席獲得数が減少する恐れがある。

 闘争民主党会派議長チャーヨ・クロモ氏も、ゴルカル党会派議長プリヨ・ブディ・サントソ氏も、政党の簡素化を実施することが必要であると述べている。彼らによると行政がスムーズに進まない原因のひとつはインドネシアの政党の乱立にある。

 開発統一党の中央本部役員会顧問団のメンバーであるホジン・フマイディ氏は、政党の林立が行政の非効率性の原因になっている証拠はないと語っている。石油燃料の値上げや米の輸入など、結論を出すのが難しい局面では、政党間の合意形成ができていると釈明し、「政党の多さが行政を難しくしている証拠はない」と述べた。

 ジャズリ氏もホジン氏と同意見だ。彼は政党を簡素化することによって、逆に独裁的な政権を生むようなことになってはならないと警告している。推進すべきは行政府と立法府の勢力の均衡であるが、現在の状態はすでに十分均衡している。改善すべく残されているのはより強靭な指導力だとジャズリ氏は続けた。  残念なことにインドネシアの二大政党は、依然として政党の簡素化構想に基づくアイデアを次々と出している。総選挙法案のアンケートに対する彼らの提案は、その大部分がイスラーム政党である中小の政党を脅かしている。

 マリアニ・アキブ・バラムリ氏が提出したアンケートの提案の中では、ゴルカル会派は議会参入に必要な得票率を5%と設定している。闘争民主党会派も最低得票率を5%まであげることを強く支持しており、ゴルカルの提案を支持する旨、スポークスマンのエカ・サントーサ氏が確認している。しかし2009年の総選挙では、2004年の総選挙に参加していた政党には3%条件が適用される。もっとも、3%の最低得票率を適用することによっても月星党、改革の星党、民族民主統一党はそのままでは総選挙に参加できなくなるだう。最低基準を満たすために彼らが共同しない限りは。(訳注2)

 「比例制度には最低得票率制度はなじまない」民族民主統一党の議長でもある憲法の専門家リアース・アシド氏は語る。最低得票率制度は通常、小選挙区制を採用している国で適用されている。

 確かに小政党もまだ総選挙に参加する機会がある。それは政党の合同だ。しかし、闘争民主党とゴルカル党はさらに強烈な武器をすでに用意している。政党の資格審査(PT)の実施の提案だ。その意味は国民議会に議席を持つために政党が獲得すべき資格のことで、この資格を満たさなければ政党は議席喪失を余儀なくされる。

 2004年の選挙では、中小政党は剰余方式の適用があったため有利だった。その方式では、票の獲得は議席に換算され、剰余票は合算された。最大の剰余票は残余議席を獲得する権利があった。先の総選挙では月星党、福祉正義党、国民信託党、それに改革の星党はこの剰余票方式によって議席を多く獲得した。

 闘争民主党とゴルカル党は、もはやこの方式の適用を望んでいない。闘争民主党は、合算を希望する剰余票は当選基数(BPP)(訳注1)を一定のパーセントで満たすべきだと要請している。剰余票 が一定の数字を満たさなければ投票者はその票が無効になってもあきらめねばならない。

 闘争民主党は、2009年の剰余票方式適用は選挙区の中の議席の価値の不均等を招くとみなしている。「価値」が何十万という票もあればわずか何千という票もあるからだ。

 月星党の中央本部役員会議長のムハマド・ファウジ氏は、闘争民主党が提案している構想は比例制の原則に反するとみなしている。「無効になる国民の票がでるのは避けるべきだ。その票が少なくとも配慮すべきで、捨てられてはいけない」とファウジ氏は語る。彼によれば2004年総選挙の剰余票方式は非常に適切だった。

 議席の割り当てと選挙区に関する提案も中小政党にとって脅威である。ゴルカル党は議席の配分を減らすべきだと要請している。以前は一選挙区に6ないし12議席が割り当てられたが、ゴルカル党はそれを3ないし6議席に減らすよう要請している。闘争民主党の提案もその数字と大差なく、3-7議席を提案している。

 彼らはこの提案を、投票者が候補者を決めやすいように、候補者数を絞ることを目的としていると言っている。「選挙区区割をより狭くすることで立候補者を有権者とより近づけることになる」とバラムリ氏は語った。

 中小政党がこの提案によって駆逐されるのは確かだ。いずれにしろ議席の割り当てが減らされれば、選挙区の数が増加するだろう。これが実施されると中小政党の議席獲得はますます脅威にさらされることになる。


注1) :
インドネシアの総選挙は比例代表制であるが日本とはシステムが異なる。選挙区の有効票数を定員で割った票数を議席獲得に必要な単位としており、例えば有効票数が10万票で定員が4名であれば25,000票が1議席獲得に必要な票数になる(これを本文中では「当選基数」としている)。A/B/C各政党がそれぞれ40,000票/30,000票/20,000票獲得していたとすれば、A党は無条件に1議席を獲得し25,000票との差15,000票が剰余票となり、B党も1議席獲得のうえ剰余票が5,000、C党は議席ゼロで剰余票20,000となる。この段階で確定は2議席のみであるので、残りの2議席を剰余票のの多い政党から順に割り振ることになる。従って、A党とC党がそれぞれ1議席を獲得することになり、結果的にA党/B党/C党が2議席/1議席/1議席となる。実際には党数がもっと多く、党同士が剰余票を合算することもできるので、かなり複雑になる。

注2) :
1999年の総選挙で2%以上の得票率を得た政党が2004年の総選挙の参加資格があり、2004年の総選挙で3%以上の得票率を得た正当が2009年の総選挙の参加資格がある。今回得票率を5%に引き上げたとしても、それは2009年の総選挙で5%以上の得票率を得た政党がその次の総選挙(2014年)に参加資格があることを意味する。



(翻訳者:山本肇)
(記事ID:po0709121hy)
原題:Parpol Islam Terancam Tergencet!
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=306629&kat_id=43



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