インドネシア語新聞翻訳
2010年2月19日(金)
【レプブリカ紙】


マス・メディアを通じた伝道を改善する

 インドネシア科学院(LIPI)は、2010年1月末「マス・メディアにおける宗教的メッセージ」というタイトルの研究結果を公表した。この研究は、マス・メディアを通じた宗教的放送は啓蒙の働きを充分にはしておらず、まして人々の行動を変えるところまでは至っていないことを明らかにした。

 この研究は、2009年6月から7月にかけてポンティアナック、ジョグジャカルタ、ジャカルタ特別市の3つの大都市において、LIPIの4人の研究員によって行われた。研究チームのメンバーであるマサユ・S・ハニム氏によると、インドネシアにおける宗教報道はテレビ、ラジオ、そして新聞を通じてすでに40年間行われているが、まだその効果が表れているとは言えないという。

 「人々のモラルは日増しに堕落しているが、宗教放送は彼らの行動を変える上でわずかしか影響を与えることができていない」と彼はこの研究結果を解説するに当たって述べた。我が国の一般的な人々は、テレビやラジオを通じた宗教的知識に飢えており必要としているのにもかかわらず、と彼は語った。

 またこの研究で、マス・メディアで放映される宗教放送は体系的でないとイスラーム教徒が見なしていることも分かった。放送されているメッセージがあまりにも広範囲なため、その宗教番組を視聴してもその内容を覚えているのが難しいのだ、とマサユ氏は述べた。

 「伝道師が講義や講話をしても、人々が放送されたことを結局は理解していない傾向がある」と同氏は語る。このLIPIの研究員は結論として、マス・メディアを通じたイスラーム放送は、信者がどこまで放送された教えを理解できているか確認できるように、ターゲットを設定すべきだと提案している。

 ターゲットにする視聴者も明確にしなければならない。そのほか、マス・メディアを通じた伝道はメッセージの戦略性をも考慮すべきだ。「伝道を行う前にわれわれは人々が何を必要としているか分析すべきだ。われわれは[伝道師の]欲求に基づいた伝道という古い方法を捨てるべきだ」とバンドゥン国立イスラーム大学の情報科学のアセプ・サエフル・ムフタディ教授はこの研究結果をコメントして述べた。

 LIPIの研究員も、マス・メディアにおけるイスラーム放送が教条的にならないようにと提案している。研究員たちは議題設定効果理論(訳注1)と培養理論(訳注2)を援用しており、宗教的メッセージを何度も繰り返して出すことに重点を置いている。「この繰り返しによって、放送で伝えたことが人々の頭の中に蓄積されてゆく。そして結局は彼らの行動を変えることになるのだ。放送は宗教的教えと学術とを融合させる必要がある」とマサユ氏は述べた。

 インドネシア・イスラーム伝道師協議会(DDII)ウスタズ・シュハダ・バハリ議長は、情報メディアはまだ伝道手段として最適な形では充分に利用されていないことを認めた。「マス・メディア、特に電子メディアを通じた伝道はもっと効果があって然るべきだ」と同氏は述べた。

 彼はマス・メディアが放映するイスラーム放送にはさまざまな欠点があると見なしている。第一に教材の選択だ。「大部分は真実のイスラーム・メッセージを伝えていない。センセーショナルなものに限られており、大切にしているのは人気だ。従って教材の側面からも改善が必要だ。」

 第二に、マス・メディアで伝道を行う人の意図が本当に誠実なものでなければならない。そしてアッラーの使徒ムハンマドと彼の友人たちの教えを原典とする教材を利用することだ、と彼は述べた。彼によると、コーランとスンナに基づいた伝道は、ムハンマドと彼の友人たちが考えていたように、人々の行動を変えることができる。

 一方、ナフダトゥル・ウラマ伝道連盟(LDNU)議長のヌリル・フダ師は、ラジオやテレビなどのマス・メディアが宗教番組のために用意している放映時間の極端な少なさが、人々の行動を変える上での宗教番組の成功の低さの原因になっていると考えている。

 さらに、その放映時間もゴールデンタイムではないと彼は語った。ヌリル師によると、ラジオもテレビも宗教放送のためにもっと多くの時間を割くべき時がきている。

 インドネシア伝道師連盟(IKADI)議長のアフマド・サトリ・イスマイル教授は、イスラーム放送が信者の行動を変えることができるように模範が必要だと語った。「習慣づけ、評価、改善などがあることが必要だ」と彼は述べた。彼によると、テレビ、ラジオ、新聞、インターネットによる伝道が盛況だからといって人々の行動を多く変えることにはならない。

 (イスラームの教えに関する)多くの知識を得るためなら、人はインターネットにいたるまでのさまざまなメディアの知識にアクセスすることができる。しかし、実践したり行動を変えたりするためには他の試みが必要だ、とこのジャカルタ・国立イスラーム大学の教師は言葉を継いだ。

 「伝道師は説教の場で話をするだけではだめで、彼が伝えたことが行為となるよう実現化を試みなければならない。ここに、タルビヤー(教育)、さらには習慣づけの必要性がある。このタルビヤーには、単に話しをするだけでなく、学識を備えそれを実践に移し、手本となり模範となることができる教師の存在が必要だ。

訳注
1) 議題設定効果理論: マス・メディア研究の主要トピックスのひとつ。マス・メディアで流通するさまざまな情報の範囲や頻度によって、受け手の中にその情報を議論するときの文脈、枠組みが習得されてゆくこと、またその現象。
2) 培養理論: マス・メディア研究の主要トピックスのひとつ。長期間にわたってテレビ等に接することによって、テレビに描かれている現実が、受け手における現実認識に影響を与えること。

(翻訳者:山本肇)
(記事ID:li1002191hy)

原題:Membenahi Dakwa Lewat Media Massa
http://koran.republika.co.id/koran/52/104584/Membenahi_Dakwa_Lewat_Media_Massa



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