インドネシア語新聞翻訳
2010年2月18日(木)
【レプブリカ紙】


宗教婚に対する〔刑事的〕処罰は論理的でない

【ジャカルタ】
 ナフダトゥル・ウラマ(訳注1)理事会(以下PBNU)は、宗教婚(訳注2)を行う者に対して政府は刑罰を与えるべきではなく、行政罰だけで十分だと見なしている。これは結婚に関する宗教裁判実体法案(訳注3)に関連してのことだ。

 「宗教婚が罰せられるならば、それは極めて論理的ではない。不貞、フリーセックス、同棲(訳注4)は両性の合意があると考えられるため、基本的人権(HAM)の一環と見なされている〔にもかかわらず、だ〕」水曜日(2月17日)にジャカルタで、PBNUの議長であるアーマッド・バグジャ氏はそのように述べた。

 イスラームでは宗教婚は確かに完全なものではないが、後見人と証人2名がおり、シャリア〔イスラーム法〕においても合法とされている。その結婚契約を公表して披露することを、義務ではなく推奨される行為としてムハンマドも教示しているからだ、と同議長は述べた。

 同議長は次のように述べた。宗教婚の公表は社会の誤解、陰口、中傷を回避し、子孫の心の安定を守るために行われるべきだ。宗教婚を国の規定によって補完するならば、行政上の義務と罰を施行することで十分だ。

 例えば、家族などとして国の承認がまだないことが挙げられる。「もし〔法案が可決されて〕罰則が適用されるようになれば、宗教婚をする者は〔罰せられたくないために〕同棲を主張し、やがて両性の合意や基本的権利に基づいて、〔民事婚を伴わない〕同棲が広まる可能性もある」とし、同議長はさらに述べた。

 刑事上ではなく、民事上の義務に立ち戻るべきだ。女性の尊厳に対する表敬は、女性の生活に対する男性の責任のレベルによって測られる。フリーセックスにおいては、保護は全くなく、侮辱がある。

 インドネシア・ウラマ評議会(訳注5)イヒワン・シャム事務総長は次のように述べた。政府は宗教婚を行う者を処罰するべきではない。「したがって宗教婚は刑事罰の対象となるべきではない。宗教において許可されているからだ」

 同事務総長はさらに述べた。実際に門外漢の人々は宗教婚についてしばしば誤解している。宗教婚は気楽で責任回避できるもの、と彼らは見なしているが、それは正しくない。

 同事務総長によれば、宗教婚を行う者には、夫が妻を養うことも含めて〔民事婚と〕同じ義務がある。宗教婚をする者の中に、責任を持たずに妻や子供をなおざりにする者がいれば、彼こそ処罰される〔べきだ〕。宗教婚〔自体が刑罰の対象となるべき〕ではない。

 同事務総長によれば、宗教婚をする者の邪悪な態度や行為によってもたらされる影響に、注目するべきだという。例えば彼が責任から逃れ、妻を騙した場合だ。宗教婚を行う者が責任を持っている以上は、〔彼に何らかの罰則が科されることは〕問題はない。

 同事務総長はさらに次のように述べた。〔むしろ〕問題となるのは詐欺を行うなどの犯罪行為だ。人々は通常まだ学習を続けるために宗教婚をする。例えばすでに両性の合意があったとしても、高等学校の生徒はさらに学習を続けるべきだ。

 もし彼らが結婚〔民事婚〕すれば、学校は彼らを受け入れないだろう。したがって彼らは宗教婚をせざるを得ない〔なぜなら、そうしないと彼らは同居が許されないからだ〕。同事務総長によれば、そのケースでは彼らが〔民事婚でも宗教婚でもなく、未婚のまま同棲するような〕不適切な付き合いをするよりも、むしろ宗教婚の方がよいという。宗教婚により彼らの関係は合法となり、罪にはならない。

 制定される法律によって宗教婚が刑罰の対象とならないように、その結婚についての法律が制定される前に、イスラーム法学と法律の専門家たちは、積極的に会合し、あらかじめそのことを討議するべきだ。

 宗教社会研究機関(eLSAS)のアスロルン・ニアム・ソレー専務取締役は次のように述べた。宗教婚の実施は行政上の違反、つまり結婚に関する1974年法律第2条第1号の違反であり、刑事上の違反ではない。

 そのため、その法案の草案での宗教婚実施の罰則化計画は、不釣り合いで行き過ぎだ。「婚姻届の問題は民事上の管理の問題であるため、違反者が刑罰の対象となるならば正しくない」と同専務取締役は述べた。

 同専務取締役は婚姻届の義務については同意する。これは法的確実性を与え、結婚におけるネガティブな動機や影響を抑止する。「婚姻届は行政上重要だ」と同専務取締役は述べた。
【rahmat sb/dyah ratna,ed:ferry 記者】


訳注
1) ナフダトゥル・ウラマ: インドネシアの伝統主義的イスラーム組織

2) インドネシアの婚姻方式には、宗教婚や民事婚などがある。宗教婚では、教会、モスク等で宗教儀式を行うことによって婚姻手続きを行なう。民事婚では役所で婚姻儀式を挙行して、婚姻届を市区町村等の役所や公的機関へ届ける。

3) 結婚に関する宗教裁判実体法案: 訳注2で記したように、インドネシアにおける婚姻制度は、行政機関に届け出る民事婚と、各宗教関係の施設に届け出る宗教婚などが存在する。
このうち、イスラーム教徒が行う宗教婚については、一夫多妻婚や16歳以下の女性の結婚、あるいは正規の手続きを踏んでいない事実婚など、制度の運用面についての不備がしばしば指摘されている。また、民事婚を経ておらず宗教婚のみを行い、その後離婚した女性の生活保護や遺産相続の扱いなど、他の法律との関連において問題が存在するとされている。さらに、婚外性交渉の禁止などのイスラームの考え方、あるいは女性による経済的自立を背景とする離婚の増加など、今日の人権意識や経済情勢からも、宗教婚のあり方について、インドネシア国内でさまざまな議論がなされている。
こうした中、インドネシア議会で結婚に関する宗教裁判実態法案が提出され、その中で宗教婚の内容や運用について厳密化を図るとともに、これに違反する者に対する刑事罰の実施が明文化されていた。同法案に対して各イスラーム団体は、刑事罰の実施について反対の立場からの主張を行っている。

4) イスラームでは、婚外性交渉や未婚女性の性交渉、および未婚の男女による同棲が認められていない。

5) インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織

(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:li1002181kk)

原題:Pemidanaan Kawin Siri tak Logis
http://koran.republika.co.id/koran/14/104413/Pemidanaan_Kawin_Siri_tak_Logis



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