インドネシア語新聞翻訳
2009年9月12日(土)
【レプブリカ紙】


女性イスラーム教徒に対するジルバッブ着用禁止は基本的人権侵害

【メダン】
 女性イスラーム教徒が活動を行う際に、ジルバッブ(訳注1)を着用するのを禁止するのは基本的人権侵害と考えられている。「世界ジルバッブ連帯の日」を記念する運動の調整役プスピタ・サリ・ニンシー氏は、今日に至るまでインドネシアではまだ多くの女性イスラーム教徒が仕事をする際にジルバッブ着用が禁じられていると語った。

 「ジルバッブ着用禁止が会社の規則であろうと、個人からの指示であろうと、それは[基本的人権の]侵害になる」とプスピタ氏は、9月11日(金)メダン市のインドネシア・イスラーム学生行動連盟(KAMMI)に加盟している学生たちが行った平和的な運動を展開する際に述べた。

 この運動はジルバッブ着用を希望しながら、規則によって妨げられている女性イスラーム教徒を励ますために行われた。毎年9月4日の「世界ジルバッブ連帯の日」は、エジプトの女性イスラーム教徒マルワ・シャラビーニーの勇気を思い起こすための記念日だ。彼女はジルバッブ着用を守り通したために、法廷でドイツ人の人種差別主義者に刺殺された(訳注2)。

 プスピタ氏によると、世界で最大のイスラーム教徒の国であるインドネシアでは、ジルバッブを着用したいと願う女性は、まだ一部の企業や団体から完全に受け入れられていない。「例えば、ジルバッブを、特に看護婦に対して、禁じている病院がまだ多くある。そしてこの問題はまだわれわれの指導者たちの関心事にはなっていない」

 彼女はまた、日常においてインドネシアの多くの女性は、まだジルバッブの正しい着用の仕方を理解していないと語った。「例えば頭の上部だけを被い、髪や首がむき出しのままになっている者がいる。われわれはこのことも問題にしている」

 KAMMIの活動家サビタ氏は、写真を撮るときにはジルバッブを着用しないよう、女子学生に義務づけている教育機関がインドネシアにはいまだに多いと話している。その理由は、写真の中で両耳が見えるようにというものだ。人々の大部分がイスラーム教を信じている国でジルバッブがまだ禁じられているなら、イスラーム教徒が少数派である国で、女性イスラーム教徒がジルバッブを着用すると蔑視されるのもしかたがないと彼女は述べている。

 「これが、なぜ世界ジルバッブ連帯の日があるのかの理由だ。なぜならまだ多くの女性イスラーム教徒が宗教の教えを、ここの場合はジルバッブを被ることだが、実行する権利のために戦わねばならないからだ」と彼女は語った。国家人権委員会議長イフダル・カシム氏は、イスラーム教徒の女性従業員がジルバッブを着用するのを禁じたり妨げたりすることは、重い制裁に値する差別だと述べたことがある。これは以前に、ジャカルタのある病院で、イスラーム教徒の従業員や医師がジルバッブ着用を禁じられたことを踏まえた発言だった。

 イフダル氏は、女性イスラーム教徒がジルバッブ着用するのを禁ずる会社の方針は差別行為であり、それは宗教の自由に関する1999年法律第39号および人種差別撤廃に関する2008年法律第40号に反すると語った。

 「それは1999年法律第39号に反しており、この法律に反する者は15年の刑期、およびもしくは、15億ルピア〔約1,500万円〕の罰金に相当する犯罪容疑になる」と同氏は述べた。彼によると、この法律の中で規定されている宗教の自由の一つに、信仰を公に表現する自由がある。

 女性イスラーム教徒にとって、ジルバッブを着用することは信仰の自由を表現するものだ。イフダル氏は、国民の全てが公の秩序を乱すことがない限り信仰を自由に表現できると言明した。同氏は、2008年法律第40号には「宗教」という言葉は使われていないが、〔宗教は〕「エスニック」という言葉の解釈の中に入ると考えられるとしている。

 「なぜなら、インドネシアでは宗教的グループの形成はエスニックに基づいて起こる傾向があるからだ。(訳注3)」彼によると、ヨーロッパのいくつかの国々では、信仰の表現を禁ずる政策を撤廃してからすでに久しい。同氏は、当初ジルバッブ着用を禁じていたが今では許容しているフランスを例としてあげた。「国が信仰の自由をまだ保証できないのであれば、それは後退のひとつの証だ」


訳注
1) ジルバッブ: 女性のイスラーム教徒が、人目に触れてはならないとされる頭髪や首、耳を覆うためにかぶるベール
2) 2009年7月にドイツのドレスデンで発生した事件のこと。エジプト人女性のマルワ・シャラビーニーさんが街中でジルバッブを被っていたところ、ドイツ人男性から「テロリスト」と呼ばれたため、男性を告訴した。ところがその裁判中、マルワさんは法廷内で逆恨みをした男性によって刺殺された。詳しくは、東京外国語大学「日本語で読む中東メディア」http://www.el.tufs.ac.jp/prmeis/html/pc/News20090707_094031.htmlを参照。
3) エスニック: 例えばバリ人にはヒンドゥー教徒、中国系には仏教徒、バタック人やアンボン人にはキリスト教徒が比較的多い。


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:li0909121hy)

原題:Larang Muslimah Berjilbab Langgar HAM
http://www.republika.co.id/koran/14/76003/Larang_Muslimah_Berjilbab_Langgar_HAM



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