インドネシア語新聞翻訳
2009年5月7日(土)
【メディア・インドネシア紙】


インドネシア・ウラマ評議会、緊急時の髄膜炎ワクチン使用を許可

 インドネシア・ウラマ評議会(MUI)(訳注1)は、代替品が出て来るまでの間、現在メッカ巡礼者(訳注2)に与えられている豚の酵素を使用した髄膜炎ワクチンを緊急時に使用することを認めた。巡礼時に脳炎に感染するのを防ぐためだ。

 「われわれはトリプシン酵素(豚から作られる酵素)がイスラーム法上ハラム(訳注3)になると判定している。しかし、このハラム性は髄膜炎ワクチンの代替となるものがない場合、あるいはそのための基材が高価である場合は考慮される」とMUIのウマール・シハブ議長は5日(火)ジャカルタのMUI事務所における記者会見で述べた。

 とはいえMUIとしては、イスラーム教徒、特にメッカ巡礼者がいつまでも不安を抱かなくてもすむように、政府、特に保健省がハラムな成分を含まないワクチンの手当てに真剣に取り組むことを強く要請するとして、同議長は次のように語った。

 「われわれはいつまでも緊急事態を適用したくない。政府は豚の酵素を使わないワクチンの手当てに努力して欲しい。」

 一方、この件に関して政府とMUI、すなわち宗教省、保健省、医薬品・食品監督庁、およびMUIの食品・薬品・化粧品審査委員会(LPPOM MUI)が、髄膜炎ワクチンに発見された豚の成分の含有について討議するために近々会合を持つことになると彼は述べ、「不安が起きることがないよう、そしてメッカ巡礼に出かける人たちを安心させられるよう、願わくばその結論が早く出て欲しい」と語った。

 政府はサウジ・アラビアにこのワクチンの使用を条件としないよう要請すべきでないかと尋ねられた同氏は、この件は世界保健機構の要請に基づくサウジ・アラビア政府の条件になっている。なぜならこの脳炎ウイルスは熱帯性気候では伝染しやすいことが研究の結果分かっており、特にアフリカ出身の巡礼団から感染する恐れがあるからだと答えた。

 一方、LPPOM MUIの役員ナドゥラトゥザーマン・ホーセン氏はハラル(訳注4)なワクチン基材に代えるのは非常に難しいことを認めている。というのは、標準的なワクチンは豚から採取したトリプシン酵素を使用しているからだ。「実際には牛にも難点がある。問題はこのワクチンがハラルかハラムかを問題にしない海外で作られていることだ(訳註5)。」

 さらに、ヨーロッパ諸国では牛から採取された酵素が狂牛病を持っていることを心配していると同氏は述べた。

 そして彼は、ワクチン製造に関する調査・研究を行うための資金がイスラーム世界では不足しており、ようやくマレーシアがワクチンの製造を始めたばかりであることを遺憾としている。

 彼はまた、なぜワクチン素材として豚がよく利用されるのか説明した。それは豚のDNA構造の95%が人間のそれとほぼ同じであるからだ。「だから、豚インフルエンザが容易に人のインフルエンザに突然変異するのも驚くにあたらない」と彼は説明した。


訳注
1) インドネシア・ウラマ・評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
2) メッカ巡礼: メッカ巡礼は大巡礼・小巡礼に分けられる。前者はハジと呼ばれ、イスラーム教徒の義務である五行の一つであり、一年のうち特定の期間(イスラーム暦の12月上旬から中旬)に行われる。大巡礼を果たした男性はハジ、女性はハジャという称号を得る。小巡礼はウムロと呼ばれハジの期間以外はいつでも行うことが可能。この記事でのメッカ巡礼は大巡礼、小巡礼の双方を意味している。
3) ハラム: イスラーム法によって禁止されている行為、摂取物
4) ハラル: イスラーム法によって許容されている行為、摂取物
5) 豚以外の家畜、例えば牛でもイスラーム法に則った屠殺方法(「アラーは偉大なり」と唱えながら頚動脈を切る)で処理されていなければ、その肉はハラムになる。例えワクチンが牛から摂取された酵素を使っていても、イスラーム諸国以外ではその牛がイスラーム法に則って屠殺されていない可能性が大きいことを指している。


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:li0905073hy)

原題:MUI Izinkan Penggunaan Vaksin Maningitis Jika keadaan Darurat
http://www.mediaindonesia.com/read/2009/05/05/73544/91/14/MUI-Izinkan-Penggunaan-Vaksin-Maningitis-Jika-Keadaan-Darurat



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