インドネシア語新聞翻訳
2008年8月14日(木)


さらにポップで受け入れやすくなったイスラーム・ソング

 「ぼんやりと無気力だったとき/ 母は力づけてくれる素晴らしい言葉をかけてくれた/ 許して。忘れていた母の愛/ 母さんは心から祈ってくれたのに」アンカサ・バンドのボーカリスト、アトは感動的な歌詞をシンプルに歌う。伴奏はソロ・ギターだけで、アトのポップ・ロック風な歌声が甘美に流れるアコースティック・ギターに混ざり合い、溶け込むとドウィ・チャーヤディの目が潤んだ。

 「とても感動しました」2008年のイスラーム教徒・作詞・作曲コンテスト(以下LCLM)のアルバム発売時に、彼は述べた。

 ドウィ・チャーヤディは、アトが歌う「母を忘れない」という曲の作詞者だ。アトがその曲を歌うと昔の思い出がよみがえるようだ。「小さい頃から奮闘して育ててくれた母のことを思い出しました」コーラン読誦を指導している彼は本紙に対してこのように述べた。  ある日の夜明け前、狭い部屋でその曲は生まれた。  アザーン(注1)の声がちょうど響いた時だった。ドウィ・チャーヤディは、アルナン・マミン、ラマダニ・スタントと共に瞑想をした後、話をしていた。しばらくして、母の思いやりや奮闘を物語る、一つの曲のインスピレーションが浮かんだ。

 その感動的な歌詞を生み出すことになったドウィ・チャーヤディの瞑想の話は、LCLMアルバムが人々をひきつける一つの要素だ。10曲のうち9曲が2008年LCLMセレクションの曲で、著名な歌手やミュージシャンたちが参加し、ひとつのコラボレーションを作っていることも、もう一つの魅力となっている。

 その中には、クリスダヤンティ、シャンティ、ギタ・グタワ、ラッキー・オクタヴィアヌス、オッピー・アンダレスタ、カンゲン・バンド、アンカサ・バンド、エレメント、マリック・アンド・ザ・エッセンシャル、そしてソロ・デビューしたアディティヤがいる。そのミュージシャンたちが、ポップ・ミュージックの根底にある考え方に基づいて、このアルバムが誕生したと主張している。

 ギギやウングなどの一般向けのグループ結成後、現在ポップ風の宗教曲はさらに増えた。2008年LCLMの宗教アルバム、音楽ディレクターのドゥディ・SS(別称エナイ)氏は、それを自然の流れと考えている。ミュージシャンで、アグネス・モニカのアルバムの指導にあたった経験もある同氏は、そのことで宗教曲の改革がさらに進展するなら、それを受け入れるという。

 2008年LCLMの宗教編集アルバムを制作したレコード会社、ワーナー・ミュージック・インドネシアのジュサック・イルワン・スティオノ代表取締役は、これは確かに基準の変化の一つと考えている。宗教曲はイスラミック・ゴスペル(注2)やカシダー(注3)、中東の器楽編成法を取り入れた音楽だけではないはずだ。「今はさらにもっとポップなのがはやりです」と同氏は述べた。

 同氏によれば、この変化は宗教曲(この場合はイスラーム・ソング)をさらに身近なものにするという。

 形式は普通の曲と同じで、歌詞だけが違うからだ。

 「この変化は、宗教曲が全ての人々に受け入れられるための要因となります」と同氏は述べた。

 イナ・ヌライニの「許して」を歌うシャンティも同じような意見だ。「メロディーがいいし、若者向きです。歌詞は考えさせるもので、これまでのものとはちょっと違います」

 デニ・ムルヤナの「瞑想」というソウル・ソングを歌うマリック・アンド・ザ・エッセンシャルのボーカリスト、アンガは「2008年LCLMアルバムに参加できたことは光栄です。2008年のLCLMアルバム曲に入っている宗教曲が、できればメッセージを伝えるものでもあってほしいのです」と述べた。

水曜日(8月13日)の晩、タマン・ミニ・インドネシア・インダ(注4)のワヤン・スタジオで、2008年LCLM 宗教アルバムの発売記念パーティーが行われた。パーティー開催後のオープニングスピーチで、インドネシア・ウラマ評議会(注5)ディン・シャムスディン代表は、宗教的でポジティブな曲や歌詞がLCLMから引き続き出てくることを期待すると述べた。

 ムハマディア(注6)理事会代表でもある同氏は、LCLMが人間性、公平さ、平和についてのイスラーム的テーマをさらに深く追求することも期待し、さらに次のように述べた。「LCLMの作品は芸術作品にとどまらず、宗教的義務の実行に役立つ作品にもなるべきなのです」

 この機会に、Oneテレビと本紙の代表取締役エリック・トヒルと、バクリー・テレコム株式会社のエリック・マイヤー副代表取締役は、ディン氏に2008年LCLMアルバム発売記念ポスターを手渡した。

 昨晩の発売記念パーティーは、オピー・アンダレスタの登場で始まった。オピーは、ミュージシャン、ギラン・ラマダーンの伴奏で「人生の意味」という曲を歌った。パーティーには、チチ・トゥガル(コメディアン)やドウィキ・ダルマワン(ジャズ・ピアニスト)などの数名の著名人やクリスダヤンティ、シャンティ、デウィ・ギタ、マリック・エンド・ザ・エッセンシャル、ラッキー・アイドル、アンカサ・バンド、エレメントやカンゲン・バンドも参加した。

 パーティーの様子は土曜日(8月16日)の晩にOneテレビで放送される予定だ。

   エリック・マイヤー氏は、イスラーム曲には独特の美しさがあると考えており、次のように述べた。「歌詞を聞くと、アッラーの偉大さと貴さを思い出します」

  【I akb/ruz記者】

注1) アザーン: 礼拝を知らせるモスクからの呼びかけ
注2) イスラミック・ゴスペル: イスラーム的宗教音楽
注3) カシダー: イスラーム的色彩が強く、曲調は明るい歌。女性が歌う。伴奏はルバナ(片面太鼓)やマンドリンで、近代的楽器(ビオラ、エレキギター、キーボード、フルートなど)が伴われることもある。
注4) タマン・ミニ・インドネシア・インダ: インドネシア全州の文化を展示・紹介するテーマパーク
注5) インドネシア・ウラマ評議会:宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
注6) ムハマディア: 改革派イスラーム団体

(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:li0808142kk)

原題:Lagu Islami yang Makin Ngepop dan Universal



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