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2007年9月16日(日)
ラマダーンの番組の価値を評価せよ
毎年ラマダーン(注1)には、国民の日常生活の心持ちから見るとイスラーム的感性がよりはっきり湧いてくる。ラマダーン期間中のテレビ番組も、イスラーム教徒が、個人としてよりよいイスラーム性を獲得することに影響を与える。
しかし、テレビ業界人は、ラマダーンをそのようには見ていない。「彼らは、イスラーム性を向上させるような条件を創り出すのではない。つまり、ラマダーンの期間、イスラーム教徒になくてはならない特別番組を提供しようとはしない」去る8月末、ジャカルタにて、イスラーム暦(注2)1428年のラマダーンのテレビ放送プログラムのためのインドネシア・ウラマ・評議会(注3)討論フォーラムで、スナルト博士は発言した。
同氏はインドネシア大学大学院コミュニケーション研究科の教師であり、暴力番組が子供と女性の行動に与える影響についての博士課程の論文を公表したばかりだ。彼によると、テレビ業界はラマダーンをあえて明確にしていない。その証拠に、今までラマダーンの期間でも、一括して制作された番組の内容に意義のある変化はほとんど見られなかった。「このラマダーンでも同様のパターンが繰り返されるだろう」
同氏によると、テレビ経営者はラマダーンをひとつの商品のように位置づけている。これは、放送団体の経済事業体としてのステータスと関連がある。イスラーム的要素はもっぱら構成の一要素として置かれている。番組内容の主題は、すべて何が一番売れるかということにつきる。視聴者は、目につくところで、この断食月の娯楽番組からイスラーム的意味合いを量ることができる」と彼は語った。
同氏は次のように付け加えた。問題なのは、フィクションと現実を別々に理解するのが難しいことだ。視聴者は、登場人物の非難される行動を模倣しかねない。「その他同様に危険な影響は、当たり前に暴力が行なわれるなど、周囲の状況に対しての感受性の鈍化が起こることだ」
フェッティ・ファジュリアティ・ミフター氏は、ラマダーンの番組を評価して憤りを感じた。同氏は、現在インドネシア放送委員会副委員長で、元ラジャワリ・チトラ・インドネシア・テレビ(略称RCTI)局のプロデューサー、アナウンサーでもあったが、サフール(注4)及びブカプアサ(注5)時の番組中のジョークとわいせつなコメントを目にして、憤慨した。インドネシア放送委員会が昨年モニターした結果、50件の神秘的(霊など)で暴力をテーマとしたテレビ番組が存在し、ラマダーンの特別番組として放送された。「結局のところ、視聴者が断食について得ることができたのは、飢えと渇きを我慢することだけだ」と彼は発言した。
その種の番組を放送するテレビ局は、既にインドネシア放送委員会より厳重な注意を受けている。禁止されている放送に関する法律、正確には2002年法律第32号第36条第1項があるからだ。この規定は要約すると、テレビ番組の内容がインドネシアの宗教や文化の価値を実践する性質を持つように指示している。
しかし、その厳重な注意は、テレビ局の経営者にとって効果がないと考えられる。インドネシア放送委員会も無力を自認している。「インドネシア放送委員会の注意は、放送団体の利益追求の努力には全く役に立たない」と同氏は発言した。
テレビ番組は、市民の行動に多大な影響を与える。視聴者は、テレビ番組で放送された行動、さらにイデオロギーも吸収するだろう。そのため、番組の内容は建設的なものが選ばれるべきだ。
通信情報(担当)国務大臣、ムハンマド・ヌー博士は、社会生活に悪影響のある番組に声高に反対している。その姿勢の根底には、テレビ番組は子供たちのモラルに影響する可能性があるという見解がある。「もし気高いモラル形成を手助けすることができないのなら、テレビ番組を消してください」と同氏は明言した。
同氏は、あるメッセージを用意して呼びかけた。恐らくテレビ業界関係者や一般の視聴者に受け入れられるだろう。「番組の内容は、禁止ではないが望ましくないエリアにまで十分に達している。ハラム(注6)の領域まで入らないでください」と彼は発言した。
映画検閲団体の委員長であるティティー・サイド氏によると、ラマダーン特別番組には全世代向けのものがふさわしい。番組は子供たちも見ることができなければならない。断食月の期間、子供がテレビを見る時間帯は、通常大人の世代の番組が放送されている西部インドネシア時間(注7)午後10時から午前3時の時間帯へとずれるからだ。「これは、テレビ番組、映画、そして広告についても当てはまる」と彼は発言した。
テレビドラマの製作担当は、そういった考え方にはなかなか同意しない。テレビ業界は、視聴率に支配されている市場であり、番組制作会社が製作をする際、まだテレビ局が自社の考えを押し付けている。「視聴率を優先する会社こそ、再調整されるべきだ。我々の作品の多くは、視聴率が理由でテレビ局から断られている。視聴率は、我々を疲労困憊させる猛獣のようだ」とマルチビジョン・プラス(注8)の、グロザ・サバクティ総務部長は発言した。
視聴率の問題について、ハジ・ムハンマド・サイド・ブダイリー師は、代替の理念を提供した。彼は視聴質の存在が重要であるという見解を示した。「そうすれば、社会は番組の質を評価し、良質のテレビ番組を見ることができる」とインドネシア・ウラマ評議会の情報・通信委員長である同氏は発言した。
テレビ番組に対する批判
- ムーティア・ハッタ・スワソノ女性地位向上担当国務大臣は、「テレビドラマや、映画の放送は、女性達の知的水準を向上させない。かえって残酷さや害悪を教える」と見ている。
- コミュニケーション学専門家のエフェンディ・ガザリ氏は、「その馬鹿げたきらいのあるテレビ番組を国民の知的水準を向上させる番組へ変えるためには、資本家だけに任せることはできない。一般からの多大な圧力がなければならない。
インドネシア・ウラマ評議会への社会の訴え
- ラマダーンのお笑い番組は、憚りなく卑猥な会話をする傾向がある。芸人も品行良くない服装だ。
- イスラーム信者でないテレビドラマのプレゼンターや役者が、ラマダーンの番組で女性イスラーム教徒として登場した。
- イスラーム法の専門指導者の領域に関することに返答したり、指示したりできない者を起用した。
【reiny dwinanda 記者】
注1) ラマダーン: イスラーム暦9月 断食月
注2) イスラーム暦: イスラーム暦:ヒジュラ暦とも言う。預言者ムハマンドがメッカからメディナに移住した622年を紀元とする。月の運行を基本とする太陰暦で1年が太陽暦より11日短い。今年はイスラーム暦1428年に相当する。
注3) インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
注4) サフール: 断食を行なう際に夜明け前にとる食事。サフールにはアッラーの祝福があるとされ、なるべくサフールをとることが勧められている。サフールをとる時間は真夜中から暁(夜が白む頃)までである。
注5) ブカプアサ: 一日の断食を終えて食物を口にすること。
注6) ハラム: イスラーム法によって禁止されている行為、摂取物
注7) 西部インドネシア時間: インドネシア時間は、西部インドネシア時間(日本時間−2時間)、中部インドネシア時間(日本時間−1時間)、東部インドネシア時間(日本時間と同じ)に分かれている。首都ジャカルタは、このうち西部インドネシア時間に属す。
注8) マルチビジョン・プラス: 大手プロダクション会社
(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:li0709161kk)
原題:Menakar Nilai Tayangan Ramadhan
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=307196&kat_id=306
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