2007年8月3日(金)

問題のある薬品

医者の処方箋で出される薬品は、情報入手に限界があるため、含有成分や成分構成を調査するのが極めて困難

 世界の薬品は急速に研究が進み、病気に負けないぐらい質量ともに増大している。治療できれば何でも利用してしまう製薬研究のもとで、ハラル(注1)性が犠牲になっている。豚から摂った成分、人間の器官、その他のハラム(注2)な成分が使用されているのだ。

 薬品のハラル性の検討は、特に一般の人々が入手できる情報が少ないため、困難で制約が多い。医者の処方箋で出されている薬品は、情報入手手段が非常に限られており、含有成分と成分構成を調べるのが特に難しい。

 薬品業界は、豚から摂った成分を主要成分、副成分、補助成分として使用した薬品があること、受精卵や、人間の器官、アルコールを使用した薬品があることを公表している。

インスリン
 インスリンは、体内の糖分を調整するために活用されるホルモンである。糖尿病患者は、体内の糖分状況を正常に戻すため、体外からのインスリン・ホルモンを必要とする。インスリンは、注射や接種で体内に入れられる。アイルランガ大学のスギヤント教授によると、遺伝子工学の成果により、このインスリンのもとは、哺乳類の分泌腺の細胞や微生物から作ることができるという。哺乳類なら、ヒトのインスリンと最も似ているのは、豚のインスリンだ(構造を参照)。

 ヒトのインスリン:C256H381N65O76S6 分子量=5807.7
 豚のインスリン:C257H383N65O77S6 分子量=5777.6
  (わずか1アミノ酸の相違)
 牛のインスリン:C254H377N65O75S6 分子量=5733.6
  (3アミノ酸の相違)

 この製品を製造販売している製薬会社は、数社ある。よく知られているものの一つが、ノボノルディスク社製造のミクスタードである。ミクスタードには、多くの種類があるが、それぞれに違った製薬コードがある。その中には、ヒトの遺伝子を細菌に組み込んで増殖させる、遺伝子組み換え技術を通じて作られた製品や、動物(豚)から抽出された製品がある。しかし、ハラル性についての情報が非常に少ないため、医者も豚から作られたのか、そうでないのかが分からない。遺伝子組み換えのインスリンは、動物から作られたものと比較すると、値段が高いという問題がある。

 国際糖尿病連盟の2003年のデータによれば、インスリンのうち、ヒト由来のものは70%、続いて豚を成分とするのものが17%、牛を成分とするのもの8%、残りの5%は豚と牛の混合である。

へパリン
 この薬品は、抗血液凝固・凝集剤としての効果がある。心臓病患者が血管の塞栓を避けるために利用することが多い。脳に送られる血流が阻まれて塞栓が起こると、脳溢血になる。

 この種の薬品も市場に多く出回っており、大多数が輸入品である。豚から抽出されたことが確認されている薬品の一つが、フランスのメゾン・アルフォールにあるアベンティス・ファーマ・スペシャリティーズ社の製品ロベノックス4000で、ジャカルタのアベンティス・ファーマ株式会社が輸入している。薬品の含有成分は、豚から摂ったへパリン・ナトリウムである。このことは、医薬品食品監督庁の登録NO.DK10185600143A1で裏付けられており、ラベルの中にも「豚より抽出」と記載されている。

 残念なのは、その字が非常に小さく、注射針ではなく、パッケージに書いてあることだ。そのため、そのパッケージが捨てられてしまうと、医者も患者も見分けることができなくなる。

カプセル
 薬のカプセルは、実は生成薬品を包むために使われる補助成分だが、飲み込まれて体内に入る。カプセルを作っている成分は、ゼラチンである。ゼラチンは、牛や魚、豚など動物の骨や皮を原料としている。

 実際、医薬品食品監督庁は、インドネシアに輸入されるゼラチンは、牛から作られたものだけだと明言した。問題は、この牛由来のゼラチンが、そのままハラル性を意味するのではないという点だ。牛がイスラーム的に屠殺されたかどうかを検証する必要がある。この問題こそ、現在まで解決が難しいものである。

 その他に、既にカプセルの形で輸入されている薬品もある。例えば、薬品やマルチ・ビタミン剤の多くは、ソフト・カプセルに包まれている。このソフト・カプセルは、質が良く値段が安い、豚から摂ったゼラチンから作られているものが多い。既存のデータによると、多くのハードまたはソフト・カプセルの形をした輸入薬品がある。例えば、中国のユンナン・バイヤオ(雲南百薬)グループ株式会社製造、サラス・スブル・アユ株式会社輸入のユンナン・バイヤオがあげられる。その他に、マルチ・ビタミン錠や、高ビタミンA錠、ビタミンE錠がソフト・カプセルに包まれている。

アルコール
 アルコールは、有効成分を溶かす溶剤としてよく使用されている。咳どめ薬は、アルコールをよく使用する薬品の一つである。成分に、イスラームで禁止されているアルコール類が含まれていることが多い。そのため、咳どめ薬にアルコールを使用することが、議論を呼んでいる。
【インドネシア・ウラマ評議会(注3)の食品・薬品・化粧品検査機関、ハラル・ジャーナル】

注1)ハラル:イスラーム法によって許容されている行為、摂取物
注2)ハラム:イスラーム法によって禁止されている行為、摂取物
注3)インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織


(翻訳者:川名桂子)
(記事ID:li0708032kk)

原題:Obat-obatan Bermasalah
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=302351&kat_id=218



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