2007年4月27日(金)

求む! イスラーム教徒向けの薬品と化粧品

 サンティ(仮名)は、いつも使っている中国製の老化防止製品が、ハラム(注1)のリストに載っていたことを知り、ひどく驚いた。含有成分の中に胎盤が入っていたのだ。さらに驚いたことに、彼女はこの自慢の化粧品が、1940年から既に人間の胎盤を有効成分として利用してきたことをインターネットで知った。何と言うことだ!

 インドネシア・ウラマ評議会(注2)の食品・薬品・化粧品検査機関の副所長、アンナ・P・ルスウィムによれば、インドネシアで流通している多くの化粧品がハラル(注3)でない成分を含んでいるという。ハラルかどうか疑われているものには、胎盤のほかにコラーゲンとヒアルロン酸がある。

 胎盤は加齢を抑えると信じられており、錠剤やカプセル、ゼリー状のものがよく見られる。一方、コラーゲンは火傷をした皮膚を手当てしたり、唇をなめらかにするためによく使われている。「ウシから作られたものもあるが、大部分はブタから作られたもの」とルスウィムは語った。

 医療の世界でも、状況は同じである。患者に投与する薬がハラルかどうか、全ての医師が認識しているわけではない。例えば、心臓発作の患者に使われる液状の製品L。この薬は抗血液凝固剤として使われているが、ブタから摂った有効成分を使っている。

 そのことを証明するために、わざわざ実験室でテストする必要はない。生産者がパッケージに製造原料の一つとしてブタの成分を明記している。製品LのほかにPM30という製品があるが、これはブタから抽出されたインスリンである。この製品もインドネシアで目にするし使われてもいる。

 ブタや、ブタから派生するもの、あるいは人間の身体の一部を利用することは、医療の世界では一般的なことであり、多国籍企業の製薬会社はこのことを公開している。ワクチンや薬品、化粧品の原料の製造において、人間の身体の一部やブタが使われるのはもはや隠すようなことではない。

 しかし、それらを使うイスラーム教徒の消費者にまで、この情報は届いているであろうか。インドネシア・イスラーム病院財団の理事長ジュルナリス・ウディン教授によれば、全ての医師が薬の中味を理解しているわけではない。しかし、投与されている薬の種類や銘柄を知るための手がかりが与えられる場合もある。「特に入院患者にとって、その手がかりは大切です。なぜなら彼らが薬をもらう時には、その薬のパッケージがないのだから」

 大多数がイスラーム教徒である国にとって、ハラル製品を備えておくことは義務だと言える。しかし、ハラル証明書取得に対する会社の意識はまだ十分ではない。インドネシア・ウラマ評議会のデータによれば、ハラルの証明書を得ているのは16,040品目、つまり全体20%の製品のみだ。食料品が大勢を占めており、ハラルの証明書を取得している製薬会社や化粧品会社は5社にすぎず、内容は化粧品が2点と薬品3点の合計5製品のみである。

 インドネシア・ウラマ評議会ファトワ(注4)委員会の委員長キアイ・ハジ・マルフ・アミンは、食料品同様に化粧品や薬品がハラルかどうかについても非常に重要であるとし、24日、本紙に対し次のように語った。「インドネシアのイスラーム教徒社会で使われる化粧品や薬品が、ハラムなもの、ハラムを一部含んだものであってはならない。化粧品や薬品に証明書が必要なわけはここにある」

 マルフ師は「ハラル証明書取得が自由意志に任され義務ではないことが問題だ。ハラルの証明書を取得する化粧品会社や製薬会社が多くない原因はここにある」と続けた。

 インドネシアのイスラーム教徒の安全と安心のために、彼らが使う化粧品や薬品が本当にハラルなのか、疑わしいものなのか、それともハラムなのかを明らかにすることは必要である。

 さらにマルフ師は「化粧品や薬品に関する証明書取得が自由意志ではなく、規則や法律によって義務化されることを、ウラマ協議会は強く望んでいる。政府はインドネシアのイスラーム教徒をハラムな製品から守るために、現行の法律を変えるべきである。あるいは人々が高い意識を持ち、ハラルの証明書つきの化粧品や薬品だけを使うようにするべきた」と語った。

 マルフ師は、化粧品と薬品の生産者に対して、ただちにハラルの証明書取得を義務付けるよう政府に提案している。義務付けされれば、ハラル証明書がついていなければ、販売が許可されなくなる。「もう一つの方法は、人々がハラルの証明がついていない製品を買わないという決定をすることだ」

 また、特に医療においては、緊急事態という名のもとに曖昧にしてきた。つまり治療のためのハラル製品が手に入らない場合、ハラム製品を使うのは問題ないとされてきたのだ。

 しかし、マルフ師はこう語る。いつまでもそれが許されるわけではない。ポリオのワクチンのように、必要性が高いが生産が非常に少ない特定の薬品については、インドネシア・ウラマ評議会はブタの成分を含んでいてもその薬品の使用を許可するファトワを出してきた。それは、多くの人々の命に関わることだからだ。

 しかし、技術の進歩に伴って、いまでは多くの製品がハラルな原料で作られるようになった。例えば、薬を入れるカプセルは、今では多くが牛のゼラチンから作られるようになり、ハラルである。「政府がすぐにこの規定を設けるよう期待する。したがって緊急だからといって曖昧にしてはならない。この種の薬は本当にブタ以外から生産することはできないのか?」

 インドネシア・ウラマ評議会、食品・薬品・化粧品検査機関の所長、ムハマド・ナドゥラトゥザマン・ホーセン博士も同様の発言をしている。脳卒中の薬を例にあげ、博士は、次のように語った。以前、この薬はたしかにブタの脳からしか作れなかった。しかし、専門家に尋ねたところ、この種の薬はすでに他の原料からも作られており、ブタの脳から作られたものだけではなくなっている。「現在、薬を摂取しようと思ったら代替品は沢山ある。同じ効力を持つ薬が存在しているのだから、緊急事態のせいにしてはならない」と結んだ。

注1) ハラム: イスラーム法によって禁止されている行為、摂取物
注2) インドネシア・ウラマ評議会: 宗教学者が様々な問題に対し、イスラーム法に基づいた見解を示す官製のイスラーム法学組織
注3) ハラル: イスラーム法によって許容されている行為、摂取物
注4) ファトワ: イスラーム法に基づく宗教学者の見解


(翻訳者:山本肇)
(記事ID:li0704271hy)

原題:Dicari! Obat-obatan dan Kosmetika Halal
http://www.republika.co.id/Koran_detail.asp?id=291093&kat_id=147



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